△ ナカロマ 61
どんなに意地を張ったところで今はこうしてリヴァイの腕の中で運ばれるしかないなんて、本当に小さい子みたい…。
いい加減寝てろと言われて、強がったけれど体力がついていかずに言われるがまま何度か目を閉じていた。
気付いた時にはエルドさんやグンタさん、無事に馬を見つけられたらしいペトラさん達リヴァイ班のメンバーとの壁近くの合流地点で、ぼんやりとした頭で慌てて飛び起きた。
「リヴァイ、もう大丈夫だから、降りる…!」
皆とペトラさんの前でリヴァイに抱かれながら馬に乗るなんて絶対に嫌、と思った私の気持ちを分かってか分からないでか、リヴァイは無言で馬から降りるのを手伝ってくれた。
…少し、私を持ち上げる手は強めだったけど。
「あれ、エマさんは馬から降りるんですか?」
「ああ。足をやっているから荷馬車に移動させる」
「まだ顔色が悪いみたいですね…。エマちゃん、無理しないでね」
抵抗も虚しく結局またリヴァイに腕を引かれながら荷馬車までの短い距離を移動し、
途中班員の皆さんに声をかけられて申し訳なくて頭を下げながらお礼を言った。
乗せられた荷車には二つの木樽の他に、
来る時に積んであったと思われる器材の為のネジやらゴムやらがいくつか残っていた。
部品だけでも大きく作られているようで私は見たことがないものだ。
きっと、全容は大掛かりなものなんだろう。
今回のリヴァイ班はこれを壁外へ運んでくるのが目的だったのかな…。
そのタイミングで助けられるなんて、私ってもしかしたらかなりの幸運の持ち主なのかもしれない。
ぐるりとケープを巻かれて荷台に横になると、相当気を張っていたのか気付かないうちに意識が飛んでしまったようで、
加えて視界が遮られていたこともあってそこから壁までの道筋はあまりよく分からなかった。
荷車のままリフトで壁の上まで運ばれたのをぼんやりと覚えている。
外にいたのはリヴァイ班を含めて四、五班だけだったらしく、索敵陣形を組める最低限の人数のようだった。
他の班も其々空いた荷馬車を引いているのが見えた。
ガタガタと揺られながら、周りの声や音から調査兵団の敷地内に着いたことが分かる。
空はもう、紺色に染まり始めていた。
荷馬車の上から見慣れた空を見上げて、やっぱり外のそれとは違うな、と感じた。
それでも、ここには巨人はいない。
地面を歩けて、ベッドの上で寝て、なにも心配することなく生活をすることが出来るんだ。
今まではそれが当たり前のことだったのに、外の世界を経験してからだとどんな些細な事も恵まれているんだと気づいた。
人間て…私ってなんて鈍感な生き物なんだろう。
普通の生活も、誰より大切な人も…自分の手から離れそうになってはじめて後悔するなんて。
不意に馬の足が止まり、馬のため息のような鼻息と誰かの足が地面を踏みしめる音がした。
一拍置いて、誰かの足音が近づいてくるので上半身に無理やり力を入れて身を起こした。
…それが誰のものかなんて、私にはすぐに分かってしまうのに。