△ ナカロマ 47
下半身を掴まれただけだったから運がよかった。
ブレードで巨人の手を切り落とすことが出来なかったら、あのまま食べられていた。
そのまま崩れかけた家の中に飛ばされたみたいだ。
壁が古く、脆くなっていて衝撃が吸収されたらしい。
…助かった、って。
私は大した数の討伐も出来なかったのに何を言ってるんだろう。
助かって、こんな状況でどうしたいんだろう。
とりあえず生きてはいるけれど。
本当にただそれだけだ。
体が回復しないと動くことも出来ない。
ふと耳を澄ませてみる。
あんなにいたはずの巨人の気配も、兵士達の声もしない。
周りは、怖いくらい静か。
「・・・痛・・・」
どこを怪我したのか全身の感覚を少しずつ手繰り寄せてみるが、少なくとも手足は繋がっているようだった。
ジャケットの下のシャツに血が滲んでいて、血を辿ると腕にも足にも傷を見つけた。
…でもどこも重症ではないみたいだ。
左足だけが動かすことも出来ないのでやっとの思いで一瞬顔を上げて確認すると、ひざ下が一際大きな瓦礫の破片の下敷きになっているのが見えた。
その左足自らが脈を打つように、鈍く痛みを感じる。
絶え間ない痛みが生きていることを実感させてくれるが、感慨も浮かばなかった。
これって折れてるのかな、と自分でも不思議なほど冷静に考える。
遅かれ早かれここで死ぬことになるんだろう。
でも、もう何も怖くない。
ひとりで壁外にいる現実にもう希望もなかった。
カリーナ分隊長、副班長、ダミアンや班員の皆…
他の皆は、無事だっただろうか。
まさか全滅なんてことはないだろうから、
出来るだけ多くの兵士が帰還できることを今はただ祈るしかない。
リヴァイのそばでなくても戦うって覚悟を決めてたはずだったけど。
その気力も、もう、ない。
瞼を閉じて浅く呼吸を繰り返した。
また、昨日の場面を思い出して思考が止まる。
二人で廊下で話している姿。
彼に続いて彼の部屋に入っていくペトラさん。
…扉の、閉じる音。
あの二人は、いつからそんな関係なんだろう。
リヴァイの存在が私の支えだったように、二人とも支えあってやってきたのかもしれない。
…私が知らなかっただけで。
途端に申し訳ない気持ちになる。
本当に迷惑ばかりかけてばっかりだった。
いつも、世話ばかりかけて。
むかし、彼に言われた言葉を思い出す。
−−−お前が来ても、捨て駒になると言っている。
ただでさえ新兵は生き残れない奴等ばかりなんだからな。