△ ナカロマ 46
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ぱらぱらと顔に降りかかる砂を感じて、薄っすらと意識を引き戻した。
目に入ったのは、痛いくらいに眩しい白い世界だった。
真っ白い視界に一瞬天国に来たのかと思うけど、指の先までの激痛と倦怠感が思い出したかのようにじわじわと全身を侵食していく。
ぼんやりとしていた風景も、何度か瞬きをしていると焦点が合ってきた。
白かったのは建物の壁で、そこに当たる陽の光が辺りを白く反射させているせいだった。
風が吹いて、白壁の破片をさらさらと運んでいる。
あれ、私…?
自分の部屋にいたはずなのに…。
瓦礫の山の上に横向きに倒れていることに気が付いた。
なんだか記憶も混濁していて、もう一度飛んでしまいそうな意識を頬に感じる冷たい石の感覚で辛うじて繋ぎ止める。
あの後、気が付くとベッドで丸くなって寝ていたんだっけ。
泣き疲れて寝てしまうなんて、何年ぶりだろう。
そこまで思い出して自然と彼の横顔と手の熱さが浮かんだ。
今回はリヴァイに頼れないことを痛いほど分かっているのに、死ぬほど切ない。
胸がまだ、ずきずきとひりつく。
人生初めての壁外調査だというのに心身ともにぐったりとした状態で向かうことになってしまった。
横目に入る陽の光がきれいだな、なんてぼんやり思うけど、半分以上崩れたその壁を見て途端に自分の状況を思い出す。
ああ。
…そうだ、もうここは壁の中じゃない。
こんなに建物に遮られることのない陽の光も、風の匂いも、いつもの壁の中のそれとはどこか違う。
結局私、エルヴィンにもリヴァイにも顔を合わせないまま出てきちゃったんだっけ…。
「っ…」
身を起こそうとして力を入れると体中に鈍い痛みが走る。
無意識に息を強めに吸い込んでいて、したたかに打ったらしい胸と肺がそれを拒絶したように力なく咳き込む。
その反動でまた全身が痛み、起き上がることを諦めた。
−−−どんなに気を付けても、ダメなときはダメなんだ。
人間同士が運転する馬車だって事故が起こるんだから、自分がどんなに気を付けていても不測の事態はあり得る。
そんなこともこうなってみないとわからないなんて。
彼が言う通り、私はなんて未熟なんだろう。
巨人たちを全隊に深入りさせない様に配置されていた前衛部隊。
その配列が奇行種によって崩れて、私たち中衛に伝令が回ってきた。
分隊長の判断で昔の集落があった場所まで馬で駆けて、民家を利用して巨人を討伐することになった。
兵士達を追ってきた巨人たちの数が予想以上に多くて、どの班がどこにいるかなんてわからないほど状況は入り乱れた。
何体かの巨人が倒れるのと、何人かの兵士の叫び声を聞いたのを覚えている。
−−−目の前の巨人に気を取られていて、不意に伸びてきたもう一体の巨人の手に気付くのが遅れたんだ。