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 ナカロマ 44

初めてあの小さな食堂に連れて行ってもらった帰りに、こうして本部横の宿舎の近くまで来たっけ。
あのときと同じく薄暗い廊下に、今日は自分一人分だけの靴音が響く。

煉瓦造りの宿舎の階段は螺旋状のものが二つ、本部から近い場所と一番離れたところに作られていて、各々使い分けられているようだった。
リヴァイの部屋は一番端なので、離れている方の階段を上がるとすぐ着くはずだ。
以前彼と別れたのも一般兵士宿舎への道へ続くこのあたり。

見渡してみても幸い警備兵は見当たらない。
明日は調査に向かう日なのだから、そのせいだろうか。

ほっと胸をなでおろしてから、ちらちらと揺れる灯りが照らす廊下を、誰もいないというのに隠れるようにして抜けた。

だって、なんだかいけないことをしているようで。
心を決めたはずなのに内心まだ迷う自分がいる。

夜会いたくてたまらなくなって、何度ここに来ようと思っただろう。
リヴァイの反応が怖くて、なんて言われるかと考えてしまってその繰り返しだった。
…いまだってまだ、怖い。

螺旋階段の外壁にいくつか開けられた小窓から灯りが漏れている。
そこまでやっとたどり着いて、もう一度辺りを見回してから階段に足を掛けた。
その一階と二階の中腹当たりに燭台が一つだけ設けられているようで、下から見上げると上の階は更に暗い。

怖いけど、でもそれと同じくらい彼のことが心配で。
会いに行く理由は…それで充分な気がした。


逸る気持ちを抑えながら丁度蝋燭の灯りまで階段を上った時、誰かの話声に気が付いた。


声はすぐ上から聞こえる。
何を話しているかは分からないけれど…。
低い声と、少しだけ高い声。
小さい声でなにか話している。

この声。

途端に足が止まる。
私が聞き間違えるわけない。
この、低い声。

……リヴァイ、と、女の人?

様子を伺うように少しだけ身を乗り出すと、二つの人影が見えた。
はっとして思わず壁に身を寄せる。

やっぱり、リヴァイ。

久しぶりに間近に見る彼の姿に嬉しくなるけれど。
その隣に立っているのは何度か彼の隣にいるのを見かけた彼女。
…明るい髪色のボブがとてもよく似合っている。

「…ペトラさん…?」

思わず呟いてしまった彼女の名前は、何かを話し合う二人には届くこともなく夜に消えた。



  


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