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 ナカロマ 35

人づてに訊いた彼女がいるという本部の一室を覗くと、五人ほどの兵士が一様に書類を抱えて忙しなく何かを確認しているようだった。

コンコン、と既に開いている扉をノックする。

「失礼します、カリーナ分隊長は…」

どちらに、といいかけたところで何人かが一瞬ぱらぱらとこちらを振り返り、一人の女性が歩み出てきた。
ブロンドの髪を後ろで一つくくりにしている、背の高い女性だ。
少しだけ気の強そうな青い瞳が、私を見定める。

「わざわざ来てくれてありがとうね。
えっと…エマ・ミョウジだったよね?」

「は、はい。
ダミアン、さんに聞いて…来ました。」

そうそう、と彼女は言いながら手元の紙を何枚かぱらぱらとめくる。

「そのダミアンから少し前にあなたの推薦をもらっていたのよ。
合同訓練の中での評判も他の班長からも聞いていたし…、」

推薦?
評判?

てっきり当日のスケジュール変更かと思っていたので、訓練場での評判が何に繋がるのか頭が回らない。

「あの…?」

「経歴を見たらまるきりの新兵でもないのね。
訓練兵を上位の成績で卒業、その後憲兵団に一年以上も在籍してからの編入だから誰からの文句もなかったよ。」


カリーナ分隊長は目当ての書類を見つけのか、その紙を書類の束の一番上に置いて私に向けてくる。
覗き込み上から順に目を走らせると、それは明日の班員構成の書類だった。
何名かの兵員の名前がリストになっており、班長の欄にカリーナ、班員の中にダミアンの名も含まれている。

不意に彼女が人差し指でリストを示すように辿っていき、同じようにその動きを目で追うと一番最後の部分に即席で足されたような走り書きでエマ・ミョウジと書かれていた。


第〇△回壁外調査、中衛部隊第7班ーーー。

この中に、私の名前がある。
その事実に一瞬思考が止まった。

「あなたが壁外行きを希望しているって聞いたから、ぎりぎりだったけど書類変更を申請してたんだけど…つい昨日変更が通ったの。
実は私の班員の一人が訓練中に落馬して欠員が出ていたから、あなたみたいな兵士が入ってくれるとこちらも助かる」

カリーナ分隊長はそう言って、まだ言葉が出ない私の目を正面から見つめて私の肩に左手を置いた。

「あなた本人に話す前にこうして手続きをするのはどうかと思ったけど…
わざわざ憲兵から調査兵になるなんて中々出来ることじゃない。
見習いだった理由はエルヴィン団長にあるのかな?
変更申請済みの書類は団長にももちろん出してあるけど、最終的な判断はあなた次第。覚悟が決まっているなら、ね。」

私がその気なら、調査兵団編入を歓迎してくれると言ってくれたエルヴィン。
壁外に出て、戦況が乱れればまさに命をかけた調査となる。

リヴァイの顔が、ちらつく。

それでも。
私自身は見習いといっても一兵士の自覚はあるし、この為に調査兵団へ異動してきたのだから。
今回の参加は急なのでまた今度にします、なんて戦場に向かう他の兵士たちに失礼だ。

「カリーナ分隊長、ありがとうございます。
…当日はよろしくお願いします」

彼女の目を見返してそれだけ伝えると、肩に置かれていた彼女の左手の重みが離れた。

「…あなたが訓練に出ていてくれて良かった。
当日一緒に行動する班員はあなたが一緒に訓練していたメンバーだから、紹介の必要もないしね。
副班長から当日の流れを聞くといいよ、私も後で合流するから」

「はい。分かりました」

じゃあね、と先ほどの輪の中に戻っていく分隊長にもう一度お礼と挨拶をしてその場を後にした。



  


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