△ ナカロマ 29
その数日後、医療班と補給班を行き来する私の元に訓練参加の許可を伝える兵士が寄越された。
リヴァイが動いてくれたのだろう。
毎日顔を見れるわけでもないから、彼の動きが分かるだけでも嬉しい。
加えて、私との約束をしっかりと守ってくれた。
会えなくても、私のことを思ってくれた時間が少なくともあったのだ。
それが分かって、余計に頬が綻んだ。
訓練に参加させてくれるという班の元へ向かっていると、女性兵士の他愛もない雑談が耳に入ってきた。
『−−−リヴァイ班に、』
『新兵の男の子−−−』
不意に聞こえたその単語に、足を止める。
リヴァイ班…?
『−−−あの子だよ、エレン・イェーガーって。今週から配属されたらしいよ』
『巨人になるっていう子でしょ?この前の裁判でそう決まったの?』
そんな彼女達の目線の先にいたのは、何度か敷地内で見た事のある男の子だった。
ペトラと共に掃除用具を手にしている。
リヴァイ班に入ったというのは真実らしい。
裏方の作業をしながら、巨人になるという新兵の話は人づてに聞いたことがあったが、実際に本人を目にするのは初めてだ。
こげ茶色の髪に、大きくて勝気そうな眼。
まだ顔立ちは幼いけれど背も高くて、素直そうな話し方。
リヴァイとは正反対な子だな、と思う。
巨人化するというこの子をリヴァイ班に入れて…。
リヴァイ、エルヴィン…
今度の調査で一体何をしようとしているの…?
「…エマさん…ですよね?」
「は、はいっ!?」
急にかけられた声に現実に引き戻される。
振り向くと、知らない男兵士が立っていた。
「…?」
「噂の兵団見習いって、あなたのことですよね?」
また、噂のって…。
一体なんて言われてるんだろう。
「そ、そうですけど…?」
