△ ナカロマ 20
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気が付くと、リヴァイの姿がぼんやり見えた。
夢?
次第に頭がはっきりしていくと、夢じゃないことが分かった。
あれ?
私、確か資料室にいたはずなのに…。
何度か瞬きをすると彼の姿が鮮明になっていく。
目の前の彼は足を組んで椅子に座り、何かの資料を読んでいるようだった。
その表情を見て、痛いくらい心臓が鳴った。
いつにも増して怖い顔。
鋭い目付き。
…それなのに、どこか痛いくらい悲しそう。
…あの時に似ている。
彼の感情が瞳の奥で紅く揺らめく。
冷たくて、悲痛な…。
ずきんと胸が痛くなって、がばっと起き上がると彼に手を伸ばしていた。
「…!お前、起きて−−−」
驚いたリヴァイの声が聞こえたけれど、そのまま座った状態の彼に立ったまま抱きつく。
そんな顔、して欲しくない。
傷ついて欲しくない…。
抱き締めたい、と思ったのは初めてだった。
丁度彼の頭を胸元で抱き締める形となる。
いつかの様にリヴァイの手から書類が落ちることは無かったが、前と同じ様に腰に彼の左手が回されて、頭のどこかでほっとする。
とくん、とくんと、どちらの鼓動か分からない音がして、ひどく気持ちが落ち着いていった。
「……どうした…?」
掠れたような彼の声がすぐ間近でして、今度は別の意味で心臓が飛び上がった。
「ごめん、また私…!」
焦ってすぐに彼から離れようとするが、腰をがっちりと固定されてそれも出来ない。
「リヴァイ…!?」
「…お前から抱きついて来たんだろう。どうした今更」
少し悪戯に口を緩ませた、上目遣いの彼と目が合った。
体温が急激に上昇していく。
「だ、だって…なんか怖い顔してたから…」
苦し紛れの私の説明に、リヴァイは少し眉を上げた。
「…ほう……お前は、怖い顔をしている奴なら誰にでも抱きつくのか?」
誰にでも?
リヴァイ以外の人になんて触りたいとも思わないよ…。
「そんなんじゃ、ない…」
でも、そんな事言えるわけない。
言ってしまったら、あなたはもう優しくしてくれないかもしれない。
それなのに、どこかで気付いてほしいと思ってしまう。
そんな質問なんて聞く意味が無いんだよ。
私にはあなたしか見えていないんだから。
こんなに私があなたの事ばかり考えているなんて知ったら、あなたはどうするんだろう。
目を伏せて視線を逸らすと、そんな私をリヴァイは見上げているようだった。
「…そうか。まぁ、いい」
フッと体が解放され、彼の温度も離れていく。
恥ずかしくて離してほしかったのも本当だけど、名残惜しい。
本当は、もっとずっと抱き締めていてほしい。
そんな気持ちをぎゅっと抑え込んだ。
「おい、行くぞ」
彼は手に持っていた書類を片付けると、扉に手を掛けて私を振り返った。
「え?どこに?」
がちゃりとノブが回される。
「…飯だ。」