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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -


 ナカロマ 16

昼食を終え、本部内に設けられている資料室へと向かう。
本部の三階にその部屋はある。
資料室へ来るのは何度目かにはなるが、整頓されていない書類を探す度に苦労していた。

扉を開けると、紙特有の湿っぽい匂いがした。

季節は冬に向かっているので、外は日光で温かくても風が冷たい。
日が入らない資料室の温度は廊下に比べると何度か低いようだ。
あまり人が出入りしないその部屋には小さいながらもカウチが備え付けてある。
部屋の大きさは兵士用のそれの丁度半分ほどで、壁際の棚に所狭しとファイルされた書類が詰め込まれている。
ファイルの年代は書いてあるものの、順番通りに並び替えるのには時間がかかりそうだ。
他の人は忙しいので私がこの仕事を任されたが一人では今日明日に終わらせられる量では無い。

とりあえず大まかに整理すればいいとは言われているが…。
資料の山を見て途方もない作業に息を一つついた。

「今日中にどこまで出来るかな…。」

とりあえず新しいものを集めて並び替えよう。
そう思い、一番手前の棚に手を伸ばしていくつかファイルをまとめて引出した。
そうして迷い込んだ書類は無いか簡単にファイルの中を確認しながら年ごとに整理していると、ある年から飛躍的に壁外調査での生存率が上がったことが書かれていた。

頭を過るのは、彼の後姿だ。
まだこの目では見た事が無い壁外での彼。
リヴァイが調査兵団へ入団した時期と、それは一致している。

私も詳しい事情は知らないが、あのエルヴィンの家での夜の出来事も丁度それくらいの頃だったはずだ。
リヴァイにとって初めての壁外調査で何かがあったのか、それが原因で彼はあんなに怖い顔をしていたのか。
細かい死傷者数の報告書を見ると、リヴァイが来たはずのその年からその数は年々減少している。

…リヴァイは、自分の出来る事とすべきことをこの頃に見つけたんだろう。

記述の中には勿論リヴァイの個人についての報告がなく、エルヴィンがまだ団長では無い頃の言動がちらほらと書かれている。
時系列がそろっていない書類の束が詰め込まれた箱を掴んで、大まかに分けながらカウチへと腰を下ろした。
書類の中には、私の知らない彼がいた。
兵士長と呼ばれるまでに彼になにがあったのか。

今の地位を確立するまでに戸惑いも、確執も多々あっただろう。
今の彼だって身軽なわけではない。

誰よりも自由に飛ぶと言われる彼の翼は、色々なものを背負っているはずだ。



  


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