△ ナカロマ 12
すると、リヴァイはいきなり立ち止まった。
床と彼のブーツが多少甲高い摩擦音を立てる。
「っ!」
急に止まった彼を見て、私も驚いて足を止めた。
「…?」
彼の様子を窺うが、こちらを振り向く気配はない。
「……仕事に関係なくても構わん。
お前の世話を頼まれてるんだ。
…話したいことがあるなら時間を取ってやる」
そう言うと、突然振り向いて私の頭に軽く手を置き、わしゃわしゃと髪を掻きまわした。
「えっ、きゃあっ」
その後、彼はさっさと廊下を歩いて行ってしまった。
「…ちょっと…リヴァイ!」
鳥の巣状態になった頭で呆然としながらも彼を呼ぶが、彼は曲がり角で待機していたペトラさん達と合流してどこかへ歩いて行った。
その際ペトラさんが軽く手を振ってくれたので、私は情けない髪型で会釈するほかなかった。
髪の毛ぐしゃぐしゃだし…。
なんだか、私がまだ幼かった頃の彼に戻ったみたい。
優しいのかいじわるなのか分からなくて…。
つまり、リヴァイは…なんでも相談しに来いって言ってくれた…?
私の世話を頼まれてる、と言っていたけれどそれはエルヴィンの簡単な頼みだろう。
エルヴィンは個人的な悩みも聞けなんて言っていないはずだ。
そんな言い訳を付け加えたって、さっきのはリヴァイの…彼なりの、照れ隠しに聞こえてしまう。
だって現に彼は優しいのだ。
私がここにいるのを快くは思ってないかもしれない。
でも、それで追い出そうとはしない。
…彼の言うように、相談したいと言えば必ず時間を作ってくれるはずだ。
底抜けに優しいわけではない。
言葉だってキツいし、目つきも悪い。
纏うオーラにいたっては凶悪的だ。
でも、彼は冷たい人じゃない。
…一見そうは見えないけれど、人一倍情に厚い人。
彼は、そういう人なのだ。
困っている人を見れば不器用ながらに助けようとしてくれる。
……だから、私の為だけに、時間を作ってくれるわけではない。
私の為だけに、さっきはわざわざ助けに来てくれたわけではない。
もう勘違いはしない。
一人で舞い上がりたくはない。
勝手に期待して、勝手に傷つくことを私はもう経験している。
彼は私でなくとも助けていた。
助けてくれて嬉しい、と思ったはずなのに。
同時に、私じゃなくてもいいんでしょ、と卑屈になる自分がいる。
彼の優しさに触れれば触れるほど、この優しさを他にも受けているはずの別の誰かに嫉妬してしまう。
私は特別、なんて…
絶対に思ってはいけないんだから。