×
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -


 ナカロマ 10

調査兵団、見習い。
私の新しい生活がその翌日からはじまった。

初日に挨拶に行ったキース教官の指示のもと、訓練兵団の手伝いから本部の資料整理まで、やる仕事はそれこそ山の様にあった。

調査兵団が万年人手不足というのは本当だったようで、まさに猫の手も借りたい状態だ。

色々な施設に呼ばれては簡単な説明だけ受け、他の兵士や業者に交じって作業を行う。

それでも、見習いという括りは初めて耳にするなんて人がほとんどで…。


『え、見習い?』

『見習いって、結局のところ何?』

『調査兵団兵士のことでしょ?』


なんて、会う人会う人に質問される。

見習いは一体何なのか一番聞きたいのは私の方なのに。

それに加えて、調査兵団本部で働く、いわゆる裏方の業務には男性が多い。

その中の女、しかも見習いというのは少々目立つようだ。

積まれた資料を持って本部内を行き来していると、どこかで見た様な三人組に声を掛けられた。


「あれ、君…エルヴィン団長の」

「え?」

「エマさん、だったよな」

「皆さん。こんにちは」

「ああなるほど、最近入った見習いっていうのはあんたの事だったのか」


初日にエルヴィンの部屋の前で会った三人組だ。
今日はそこにもう一人、女の人もいる。


「ペトラ、この子が前話してた子だよ」

「あっ、あなたが噂の!」


噂の?


「初めまして。エマ・ミョウジです。」

「ペトラです、よろしくね。
団長の親戚の子が兵団の中で手伝いをしてるって聞いたの。」

「そうなんですか…」


まじまじと、ペトラさんという人を見てしまう。
ボブの髪型がとても似合っている。こんな可愛らしい人も調査兵団にいたんだな。

しかも、エルヴィンと何か話し合いをしていた男性達といるということは、このペトラさんも重要な任務を任されているのかも。
憧れるなぁ。


「ねぇねぇエマちゃん。見習いって、どういう事してるの?」

「えーと、いわゆる雑用だと思います。色々な場所に出入りさせてもらって…勉強してます。」

「ふぅん…。それは助かるかも。
でも見習い枠があるなんて、私も聞いたこと無かったな〜」

やっぱり。

「そうですよね…、私自身も驚いていて。
早く一人前になりたいんですけど。
悔しいですけど、兵士としてまだ至らない部分が多いんだと思います。」

憲兵団とは設備も、意気込みも違うんだとリヴァイは私に分からせたいのかもしれない。

…遊びじゃないんだ、お前はいるべきではない…と。

「…そっか。でも案外すぐ一緒に戦えるかもね!
きっと団長の意向だったんでしょ?」

エルヴィン、というよりは…。

「あ、団長ではなくて、リヴァイ…兵長の推薦を頂いていたみたいで」

そう言うと、ペトラさんの綺麗で大きな瞳が更に大きく見開かれた。


「……兵長の…?」

「は、はい。」


…?

ペトラさんもそうだけれど、他の三人の空気も一瞬止まってしまった。
リヴァイの名前を出した途端に?

何か、私変なこと言った…?

「…それはもっと珍しいかも!
兵長も団長も、心配してるんだね、きっと。」

「心配…ですか?」

それとは、また少し違う気もするが。


「エマちゃーん」


その時不意に後ろから名前を呼ばれた。
振り向くと、今週から手伝いに入っている班の男性兵士が一人、小走りに近寄ってくる。

その姿を見てペトラさんが口を開いた。

「…お仕事かな?
忙しいのにごめんね、また話そうね!」

「はい、是非!
では失礼します。」

ペトラ達に軽く会釈をし、近づいてくる男に向き直る。

「あ、話し中だった?邪魔してごめんね」

「いえ…レミさん、どうしたんですか?」

この人は苦手だ。

いつも顔をじっと覗き込むように見てくるのでとても居心地が悪い上に、なぜか必要以上に馴れ馴れしい。

「いや、さっき見たとき資料が重そうだったから手伝おうかと思って。」

「…あ、でも…。大丈夫です、一人で十分ですから」

「まぁまぁ、二人の方が早いから」

「は、はい…」


断るつもりで足早に会議室に向かうが、レミさんに持っていた資料を半分半ば強引に奪われてしまった。



  


Main>>home