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さて、お開きだ。二人で立ち上がって。体にまとわりついた砂を払う。
「家まで送るよ。変なモノに襲われたら大変だ」
「きよのほうが、家遠いだろ」
「僕は大丈夫だよ」
そう微笑むと凛は、「またそれかよ」と渋々言う事を聞いた。
「どう。幽霊はいるかい?」
「少し……。でもいつもは夜になったら、うじゃうじゃいるんだけど、今日はそんなに。きよがいるからかな……」
凛は首を傾げながら不思議そうにこちらを見る。それでもたまに、転びそうになったりするので、見ていてとても危なっかしい。
「そういうのに、強いのかもしれないね。僕」
どちらからともなく手を繋ぐ。凛の手は汗ばんでいて、熱かった。真っ暗な夜道を二人で歩く。ああ、いいな。胸が締め付けられる思いだった。
「ここ、おれんち。ボロいだろ」
凛が行った通り、古びた二階建てのアパートがそこにあった。塗装ははげていて、ガラスの窓にガムテープが張ってある部屋もある。
「ああ、ボロいな」
「お前は、相変わらずだな」
凛は、ははっと笑った。
「母さんが居ない時だったら……遊びに来いよ」
別れがたそうに、凛は立ち止まって僕を見る。彼の心境が手に取るように分かってしまう。僕は思わず、凛の顎をぐいっと掴む。
電柱のかげ。月明かり。星はちかちかと輝いている。電柱の上部に取り付けられた明かりに虫が群がっている。がたがたと、狭い道を車が通る。
凛は何か言いたげにこちらを見ている。瞳が潤んでいる。
僕は無言で彼のその固く結ばれた唇に、口づけを落とす。
「んんっ」
柔らかくカリッと下唇を噛めば甘い声が漏れた。強引に唇を開かせる。口内に舌差し込み、拒まない凛の唇に深く吸い付く。
凛の腰に手を添えてぐっとこちらに引き寄せる。体が、熱い。
くちゅ。くちゅ。
唾液の絡まり合う音が卑猥な音となって、耳につく。
「んんっ……はあ、はあ」
凛は扇情的な眼差しでこちらを見る。思わず「可愛い」と言うと、凛はいつものように照れたような顔で、「きよ、ずりー……」と言ったっきり何も喋らなくなった。
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