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 公園の砂場で僕たちは寝転がって空を見上げた。辺りは薄暗くて、ちらちらと光る星が綺麗だな、と思ったけれど口には出さなかった。

 お互い砂まみれだった。靴の中にも、服の中にも砂は入り込んでいた。

「変なもんばっかみるせいでさあ、死んだら星になるなんて信じらんねえよ」
「星になんか、ならないよ」
「きよは夢がねえなあ……。おれは星になりたいよ」

 凛の声は真剣そのもので、本当になれるのならばなりたいというような口ぶりだった。

「どうして?」
 
 砂にまみれた凛の横顔をちらりと見る。その瞳は空を、星を、というよりかはどこかもっと遠くのものを見ていた。

「綺麗じゃんか」

 まるで自分は汚れているかのように言い捨てた。星は綺麗かな。綺麗に光っている。

 いいや、そんな事はない。

「凛は、充分綺麗だよ」
「きよ、お前……」

 たまに、変な事言うよな……と凛が照れるのが分かる。可愛い。

「なあ、見ろよ。これ」

 凛は起き上がって、おもむろに長袖のシャツを脱いだ。

 体にはいくつもの、傷跡があった。骨は浮き出ていて、まともなご飯を食べていないようだった。

「これ誰がやってると思う? 母ちゃんだぜ」

 泣きそうな声を抑えながら、強気に振る舞う凛が愛おしいと思えた。

「それでも凛は綺麗だよ。頑張ったんだな。母親を守っているんだろう」

 傷跡に触れると凛は過剰に反応した。人に優しく触れられた事がないのだろうか。出来るだけ優しく撫でる。傷跡を辿る。

「母さんも……頑張っているんだ」

 凛はぽつりぽつりと、昔話を始める。

 昔の母親は度を超す程に凛を可愛がっていたという。若くして結婚して、でもすぐに父親と離婚したらしい。新しい彼氏を作る様になってから、凛は邪魔者扱いされるようになった。

 テレビドラマや漫画に出て来そうな可愛いらしい名前を子どもにつけて、飽きたらおもちゃみたいに捨てる。

 彼氏と上手くいかなくなると、凛を強く打つそうだ。当然彼女は家事なんてしない。家庭内は荒れ放題。

 母親の幼さ故の行動だと、凛は言う。

「優しいときもあるんだ、でもさ母さんきっとまだコドモなんだ……。きよ――おれ、疲れたよ。どこにも居場所がない」

 母親が凛に冷たく当たる様になってから、変なものを見る様になったそうだ。そんな変なモノの存在なんて誰も信じてくれない。気味悪がられて友達もできない。いつもひとりぼっちだった。

 疲れた、と彼は言う。僕にはどうにもできないことだった。

「もし消える事が出きるなら、消えたいよ」

 ふーっと息を吐いて、凛は力なげに笑う。

「凛は、大丈夫だよ、生きられるよ」
「どんな、根拠だよ」

「さあね、でも。僕がそう思うんだ。凛は、大丈夫」

 凛は声を上げて泣いた。僕は彼の頭をよしよしと撫でた。

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