3

 凛の動きは少しというか、大分おかしかった。一言で言えば、挙動不審。多分そのせいで色々と上手く行っていないのだろう。

 目はきょろきょろと動いていて、何かに怯える様にびくびくとしている。そしてよく石ころも何もない所でつまずいた。

「大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫」

 それでも凛は何でもないと強気な口調で大丈夫と繰り返した。

「ここが、僕の家」

 木製の門をくぐると中には古いけれど、大きな屋敷が建っている。

「でけ〜〜! こんなとこに住んでんのかよ!」

「普通だよ。古いし、そんなに驚く事じゃない」

「……親とかいないの? 入っていいの? 」

「今は、いないから。そんなに、怯えるなよ」
 
 大げさに驚くので思わず笑うと、凛は照れながら「怯えてねえし!」と語気を荒げた。

「きよ、こんな本読むの?」
「……たまにね」
 
 部屋に置いてあった本をぺらぺらと興味なさそうに捲っている。

「ふうん、なんできよは不登校?」
 
 悪意のなさそうな顔でちらりとこちらを見る。あまり答えたくない内容だったので、にこりと笑い返す。

「――凛こそ、なんで学校行かないの?」
「……っ」

 言い淀む凛はこの話題は好きじゃないみたいだ。それなのに、人の事を聞いてくる所が子どもっぽくておかしくて、可愛いと思う。

 明らかに傷ついたような、泣き出しそうな顔をしながら凛はそっぽ向く。

「ごめん、凛」

 頬を触ると凛はぴくりと身じろいだ。

 また、泣いているの。

 彼は深い悲しみを抱いている。自分は孤独だと思っている。そうして、もう一つ彼は問題を抱えているらしい。

「なあ、きよ。これから言う事、秘密にしてくれるか」

 秘密とはおかしなことをいう。なぜなら、凛と僕は今日であったばかりで、お互いの共通の知り合いは存在しない。僕は彼の秘密をばらす様な相手がいないのだ。

 それでも真剣な面持ちで、こちらを見てくるので静かに頷く。

「ああ、秘密は守るよ」



「……おれには、幽霊が見えるんだ」

[ 4/15 ]







第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -