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凛の動きは少しというか、大分おかしかった。一言で言えば、挙動不審。多分そのせいで色々と上手く行っていないのだろう。
目はきょろきょろと動いていて、何かに怯える様にびくびくとしている。そしてよく石ころも何もない所でつまずいた。
「大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫」
それでも凛は何でもないと強気な口調で大丈夫と繰り返した。
「ここが、僕の家」
木製の門をくぐると中には古いけれど、大きな屋敷が建っている。
「でけ〜〜! こんなとこに住んでんのかよ!」
「普通だよ。古いし、そんなに驚く事じゃない」
「……親とかいないの? 入っていいの? 」
「今は、いないから。そんなに、怯えるなよ」
大げさに驚くので思わず笑うと、凛は照れながら「怯えてねえし!」と語気を荒げた。
「きよ、こんな本読むの?」
「……たまにね」
部屋に置いてあった本をぺらぺらと興味なさそうに捲っている。
「ふうん、なんできよは不登校?」
悪意のなさそうな顔でちらりとこちらを見る。あまり答えたくない内容だったので、にこりと笑い返す。
「――凛こそ、なんで学校行かないの?」
「……っ」
言い淀む凛はこの話題は好きじゃないみたいだ。それなのに、人の事を聞いてくる所が子どもっぽくておかしくて、可愛いと思う。
明らかに傷ついたような、泣き出しそうな顔をしながら凛はそっぽ向く。
「ごめん、凛」
頬を触ると凛はぴくりと身じろいだ。
また、泣いているの。
彼は深い悲しみを抱いている。自分は孤独だと思っている。そうして、もう一つ彼は問題を抱えているらしい。
「なあ、きよ。これから言う事、秘密にしてくれるか」
秘密とはおかしなことをいう。なぜなら、凛と僕は今日であったばかりで、お互いの共通の知り合いは存在しない。僕は彼の秘密をばらす様な相手がいないのだ。
それでも真剣な面持ちで、こちらを見てくるので静かに頷く。
「ああ、秘密は守るよ」
「……おれには、幽霊が見えるんだ」
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