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「おれの名前、凛って言うんだ。どう思う?」
泣き止んだらしい少年が唐突に問いかけて来る。棒切れで地面に『凛』と文字を書く。
「女の子みたいな名前だね。最近はそういう変な名前が多いらしい」
「変なって……お前は、はっきりと言い過ぎだろ」
ははっと声を上げて、僕の前で初めて凛は笑った。
「子どもの事を、おもちゃかなんかだと思ってんだよ」
凛は親と不仲らしい。おおよそ少年が言いそうにもない、そんな台詞を吐き捨てた。
「それでも、綺麗な名前だよ」
思ったことをそのままに言えば、凛は分かりやすく頬を赤く染めて、照れている。
「そう言えばお前は、なんて言うの?どこ中?あ、学校行ってないんか」
「僕の名前は、清史だよ」
凛から棒切れを貰って、地面に名前を掘る。
「なんか、爺さんみたいな名前」
「凛は、失礼だね」
「ジジツだから、しょーがない」
子ども連れの母親が心配そうにこちらを、ちらちらと見ていた。学生服の凛が昼間から公園にいるのを不審に思っているのだろう。
「ねえ、僕の家へ来るかい」
「……いいの?」
「おいでよ、少し歩くけれど」
ベンチから立ち上がると凛は僕と同じくらいの目線になった。きちんとご飯を食べているのか疑問に思えるほど、彼の体は細かった。
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