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 次の日、僕たちはいつもより早起きをした。母親が帰って来るかもしれないからだ。凛は眠たい目をこすりながら、「今日は、ありがと」と言って玄関から手を振った。

 まだ日の登っていない薄暗い道を歩く。正面から若い女の人が歩いて来る。染色された明るい茶色の長い髪にブランド物のバッグ、胸の大きくあいた体に丈の短いスカート。

 すれ違い様に、人工的な香りがふわりと鼻孔をかすめる。

 ふらふらとした危うい足取りで歩く彼女は、細い足に凶器になりそうなピンヒールを履いている。

 身にまとってあるそれらは、まるで自分を守るかのように、その女に張り付いていた。誰にも馬鹿にされないように、見下されない様に。自分自身を隠して生きる。

 疲れた顔で、目の下に隈をつくった彼女は古ぼけたアパートへ歩いて行った。

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