妄想少年
20130502

 背筋がすらりと伸びていて、背も高く佇まいが綺麗でスーツがよく似合う。

 皺のないシャツ、歩き方や仕草から見て、綺麗好きを通りこして軽く潔癖性だと思う。

 世間話の一つもしない彼の授業は退屈だと有名だ。

 授業を聞く気のない生徒は机に突っ伏して寝ているか、携帯をいじっている。

 黒板の前に立った彼はやる気のない生徒を叱る訳でもなく、退屈な授業を進めていく。

 黒板とチョークが擦れる音。彼の書く文字が整然と並べられて行く。

 グラウンドで体育をしている他クラスの騒ぎ声がたまに聞こえる。

 何人かの真面目な生徒は黒板の文字をノートに写している。

 俺は何もしないで、ただ彼の方を見ている。これだけ視線を送っても、彼と目線が合う事はない。

 退屈な授業。

 それでも彼の声は心地よく耳に届いてくる。

 趣味はなに。
 どんな本を読むの。
 音楽は好き?
 恋人はいる?
 何を考えてる授業してるの?
 毎日楽しい?

 チョークを掴む手が骨張っているところ。綺麗にスーツを着ているところ。スーツから覗く首筋や染色したことのなさそうな黒髪。神経質そうなところとか、

 好きだよ。

 ああ。

 その綺麗に着ているスーツをぐちゃぐちゃに脱がしたら、表情の変化に乏しい彼はどんな顔をするだろう。それから優しく彼の体に触れて愛撫をしたらどんな声を出すだろうか。首筋に思い切り噛みついて、その白い皮膚に痕を残す。それは痣になって、紫色に変色するだろう。それを優しく舐めてあげたい。

 その薄い唇はどんな感触だろう、
 
 息も出来なくなるくらいキスをして、




 それから、
 
 その口に俺の――。

あとがき


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