電気鉄道戦争
20130402
ふいに襲いかかるこの感覚の正体はなんだ。
朝起きた時の感覚も、窓から覗く青空も、鏡に映る人間も、靴をつま先で押し込むあの感触も全て最低な気分でさ。
何にも、触れたくない。誰にも触れられたくない。
綺麗なものなんて、なにもない。
汚い。
人混みを押しのけて、我先に緑色の固い座席に座ったあれらはなんていう生き物。
朝の満員電車は人を人でないものに変えて、すべての善意はなくなる。
車窓を流れる建物や緑は、まるでジオラマみたい。
ねえ、君たちはいつ笑い泣くのか。
感情はある?その人には母親がいて恋人と愛し合う。
今日の朝ご飯は、なんだった?
イヤホンの音漏れに気づいていない大学生。
女の大きな鞄は容赦なく、攻撃してくる。
スマートフォン、本、イヤフォン。
僕は、ここですよ。
右側のドアが開くと吸い寄せられるように人の塊が流れる。
すこしもたもたした人がいようなら舌打ちをこぼし、頭の中で殺すんだ。
アウトレイジなこの空間で、空気は濁っていて、
涙さえ出ないこの場所から、改札に定期券を通す。
その先に君がいてくれたから、全ての事を忘れる事ができた。
毎朝彼はそこで僕を待っている。
「おはよう」
立ち止まって視線を絡ませる。
君は相変わらず花の様に笑うね。
「改札通る前、泣きそうな顔してた」
嬉しそうにからかう君が仕合せそうに笑うので、僕は救われた気分になる。
ねえ、手をつなごうか。
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