DAY-2
何だか美奈子が変だ…。
最近妙にソワソワしてるし、聞いてもはぐらかされる。
それにしてもこの前不二山と何話してたんだろ?
あの不二山が驚くって何だろう?
話してる不二山を見る美奈子は落ち着かないそぶりしてたし、真剣に頷いて見つめてた。
しかも美奈子の態度は思わず抱きしめちゃいたくなる位可愛かった。
本当に可愛かったな…。どうしてあんな可愛いんだろ。
あんな顔されて『ルカくん』なんて言われちゃったら。
ああ、ダメだ…。ドキドキしてきた。
今すぐ触りたい、抱きしめたい、キスしたい、食べちゃいたい。
「はぁ…、美奈子に会いたい」
「いつも会ってんだろうがよ」
「足りないよ。いっその事ダイナーで美奈子も一緒に暮らそうよ」
「バカかテメェは」
「美奈子〜」
呆れ顔のコウは俺の頭を軽く小突いた。
特にする事もなくて、2階の窓からプレハブがある道の方を眺めてた。
そこに向かってちょこちょこ走って行くのは愛しい美奈子。
ん?と頭を上げる。
「あれ?美奈子だ」
「あ?」
窓を背もたれにしてたコウが、面倒臭そうに俺が指す方向を向く。
遠くに見える美奈子は俺の視線でいうと左から右へ。一緒に動いて姿を目で追う。
立ち止まってキョロキョロと周りを見渡し、誰かを待ってるみたいだ。
「あんなとこで何してやがんだ?」
「俺が聞きたいよ」
待ってるのはもちろん俺じゃない。約束してない。
じゃ、誰?
「あっちの方何かあったけか?」
何か…。
あのプレハブ柔道部じゃないの?
…まさか不二山?
一瞬ザワッと不安が横切って、この前の光景を思い出す。
このまま見失いたくないな。
不二山とどういう関係か気になるし、簡単に体触らせてたし、頭も撫でられてた。
閉じ込めてた気持ちが沸き上がってくる。
何で他の男に触らせてんだよ
ここで俺の中の選択肢。
『階段まで猛ダッシュ』
『飛び降りる』
もちろん『飛び降りる』だ。
ヒョイと2階の窓枠を越えて、空に飛び出す。
「行ってくる」
「ばっ!ルカ!」
重力に引っ張られて一瞬で地面に着地。ジーンとする足。
上を見上げあんぐり口を開けて、俺を見下ろすコウに親指突き上げ、大丈夫のサイン。
ジンジンする足のまま美奈子を追い掛けた。