DAY-1 その時のバンビさん


小波から相談があるって言われたけど、何だろ。

部活行きてぇんだけど、切羽詰まった顔してたし、さっさと聞いてさっさと答えりゃいいか。

待ち合わせ場所の裏庭に、あいつが突っ立ってた。

「悪い!遅れた」

あいつは、慌てたように人差し指を自分の唇に当てた。

何だ?

すげぇ勢いで俺の腕を引っ張りながら、木陰に入れと言ってきた。
おまえ、結構力あんな。

「嵐くん、呼び出してごめんね」

「話って何だ。あんま時間ねぇから早く言えよ」

「あ、うん」

早く言えって最初に念押ししてんのに、なかなか話さねぇ。
顔だけがやたら赤くなってく。
なんだよ、早くしろ。

「おまえ、うんって返事したんだから早く話せ」

あいつの肩に右手置いて促した。

すると、真っ赤な顔のまんま俺をじっと見て、意を決したように頷いた。
息を大きく吸い込んで、吐き出すと同時に言葉を発した。

「男の子ってどんな風にしたらエ、エッチしたくなるかな」

…は?

言った後、あいつの肌は鎖骨らへんまでピンク色に染まりはじめた。

汗もかいてきたらしく、ハンカチを取り出すと、顔に当て、ウナジに当て始めた。

「…おまえ、何聞いてんの?」

「ごめんなさい」

「女が男にそんなん聞くもんじゃねぇだろ」

「う、うん…」

「何でそんなん俺に聞くのか言え。納得したら答える」

「…実は、好きな人がいてて、あの、私色気ないから…その…」

か細い声で真っ赤な顔したあいつが、しどろもどろなりながら答えた。

好きなヤツって琉夏かな。
新名が言ってたような気ぃする。

「そいつのこと、そんなに好きなんか。こんな恥ずかしい質問までして」

「改めて恥ずかしい質問って言われたら、汗かいちゃう。やだ、もっと恥ずかしい」

腕までピンク色に染まってきて、更に汗が吹き出してきた。

あいつが汗をかけばかくほど、なんかいい匂いまでこっちに散らばってくる。
男だったら、汗臭いだけなのに。
なんだ、これ。

俺はあいつの肩をまた思わず掴んでしまった。

その匂いに包まれたままあいつ見てっと、赤い顔してモジモジしてる姿が可愛くて、なんかそのまま押し倒したくなる。

ヤバイな、これ。

俺は腕組みした。
肩掴んでっとマズイ気した。

あ、これか。

「結論出た」

「えっ」

「よく聞けよ」

あいつは息を呑みながら俺を見て、小刻みに頷いた。
期待で目が輝いてる。




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