DAY-3 その時のバンビさん
小波からルカのことで相談がある、とメールをもらった数日後、その話を聞くために俺は小波と一緒にダイナーにいた。
小波にジュースを手渡し、ソファに座るよう促す。
「で、相談ってなんだ。」
「う、うん…あのね…コウくんはルカくんのお兄ちゃんだから、色々知ってると思うの。だ、だからね…あの…その…」
顔全体を真っ赤にさせて、ジュースの缶を両手で弄ってモジモジしやがって相談ってやつをなかなか切り出そうとしない。
その女らしい仕草が妙に似合ってて…可愛いくなくも…ねぇ。
って、俺は何を考えてんだ。
コイツはルカの女…ルカの女…。
「お、おい、もったいぶってないでさっさと話せ。どうせ、あのルカのヤローが公衆の面前でオマエにキスしたこととなんか関係あんだろーがよ。」
「ちょ、ちょっとコウくん!そんなハッキリと言わなくても…。そうなんだけどさ…」
ちょっと待て。
その口をとがらせる仕草ヤメロ。
なんでコイツはイチイチ無防備なんだ…。
こりゃルカも大変な女を好きになったもんだ。
「だろ?んじゃ、さっさと口を割れ。」
「口を割れって…なんかの犯人じゃないんだから…。」
「似たようなもんだろ。騒動のもとはいつもお前らだ。ほら、何だ?ルカのキスが良くなかったか?」
小波はこれ以上ないタイミングでテーブルから肘を滑らして、思いっきり首を左右に振る。
ホント、なんにでも反応するヤツだな…おもしれぇヤツ。
ルカが小波を好きな理由って、こういうバカ正直に反応するところだろうな。
駆け引きすることなく一緒にいられて…信じられるってヤツか。
…まあ、俺にも分かる気がするけどよ。
「じゃーなんだ、アレか。逆にルカのキスが良すぎてそれ以上のことがしたくなって困ったか?」
小波はこれ以上赤くなったら、蒸発すんじゃねぇかってくらい赤くした顔を手で覆った。
マ、マジか…これが正解なのか。
軽い冗談のつもりで言ったってのに。