「汗だ」
「…汗?」
「汗かいたら、おまえいい匂いしてきた」
「本当?」
「ホルモン出てんじゃねぇ」
「ホルモン…?」
「間違えた。フェラ…」
「フェッ、フェッ?!」
「あ、違う。フェロモンだ」
そうだ、フェラは完全に違うやつだ。響き似てっから紛らわしいな。
「やだ、もう、ビックリした…」
「悪ぃ。ま、フェラモンだ」
「嵐くん…」
「おまえは、普通に汗かいとけばいいんじゃねぇ?あっちから食いついてくると思うぞ」
「そうかな…」
「うん、大丈夫だろ。俺もそのまま押した…」
そこまで言いかけて、言葉呑み込んだ。
言いながら反射的に体が動きそうなる。
てか、もう動いてて、あいつの両肩に手ぇ置いて後ろへ倒そうとしてた。
「なあに?」
不思議そうな顔したあいつのとぼけた返事。
あぶねぇ。
「ま、そのままでいいや、おまえ」
手ぇ離してあいつの頭を掻き回した。
「俺、あんまよくわかんねーから、新名にも聞いてみろよ」
「新名くんに?」
「俺の話だけじゃ、参考なるかどうかわかんねーし」
「そんなことないよ。ありがとう、嵐くん」
「ん。でも、新名にも聞いといた方がいい。わかったな」
「うん、わかった」
あいつは、にっこり笑ってペコッて頭下げた。
新名、あいつ何て答えんだろ。
想像しただけで、腹ん中から黒い笑みが湧いてきた。
嵐くんは、一生懸命答えてくれた。
ルカくんとは違うけど、男の中の男って感じの嵐くんの意見なら、男の子の代表的な考えを聞けるかなって思ってたんだけど…。
深すぎて、ちょっとよくわからなかった。
最後はそのままでいいみたいなことを言われたけど、ちょっと面倒くさくなったのかもしれない。
何だか嵐くんらしいな、ふふっ。
新名くんにも聞いてみろって言ってたから、新名くんにも相談してみよう。
恋愛に長けていそうな彼なら、また違ったアドバイスもらえるかも。
さ、ルカくんに見つからないように…。
辺りを見回すと、目が合った。
ルカくん本人に!
ルカくんがこちらにズンズン近づいてくる。
い、今の会話聞いてないよね?!
「あ、ル、ルカくん…、い、今の…話…、もしかして…」
どうしよう、吃りまくってしまう。
「何の話?」
質問してくるってことは、聞いてないってことだよね。
ああ、良かった。
「な、なんでもないの」
これ以上突っ込まれたくない。
私は一目散に駆け出していった。