「ねぇルカくん、気になってたんだけど…」
「うん?」
もうすぐ日付が変わろうとしていた頃、下のダイナーでコウが作ってくれたチャーハンをかき込む俺に、隣に座る美奈子が聞いてきた。
「どうして、知ってたの?その……私が今日…」
「俺を襲いたがってるって?」
「も、もうっ!襲ってなんかいないもんっ」
ポカポカと俺を叩く美奈子を片手で軽く受け流しながら、ヤバいな…と心の中で呟く。
ニーナがゲロったって言うのは全っ然構わない。
むしろバレて美奈子に嫌われちゃえ。
でもきっとどうやって聞き出したかって聞かれるよな。
美奈子普段はぽやんてしてるくせにそういうとこは異常に鋭いから、平和的に面を貸して頂きましたって言っても信じないだろうし。
「知らなかったよ」
シラを切る事にした。
「えー?あの顔は絶対知ってた顔だったよ?」
「美奈子の気のせいだ」
シレッととぼけた顔をしてみたけど、むぅと上目遣いで睨まれたら弱い。
それは反則、可愛い過ぎ。
「もしかして、誰かに何か聞いた?」
それだ!
「誰かってコウとか?そういえばオマエこそ不二山とかニーナとか男と2人で何してたの?」
上手く話題をすり替えてみる。
「うっ…、それはちょっと相談に…」
よし、成功。
でも美奈子が相談してた時の事を思い出したら無性にイライラしてきた。
あいつら、ベタベタ俺の美奈子に触りやがって。
「美奈子は無防備過ぎ。俺以外の男と2人っきりになっちゃダメ」
「それ、コウくんにも言われちゃった」
「……コウと2人っきりも禁止」
「コウくんも?」
「美奈子は俺とだけ居て、俺だけ見てればいいの」
「はぁい……って、ルカくん何してるの?」
「消毒」
俺は隣の美奈子を抱き寄せるとボレロをずらして肩にキスをする。
「しょ、消毒って…なんのっ…」
「不二山が触った」
「触ったって言っても嵐くんに他意は…やっ、くすぐったいよ」
キュッと首をすくめる美奈子を無視して次はツヤツヤの髪にキスをする。
「こ、今度はなぁに?」
「不二山とニーナが触った」
「もうっ、ルカくん気にし過ぎだよ」
「美奈子の全部が俺の物なの。髪の毛一本だって他のヤローに触らせたくない」
俺の言葉に美奈子の頬がほんのり染まる。
そして最後はニーナが握った手にキスをして……コウは……触ってないけどいいや、キスしちゃえ。
美奈子の細くて可愛らしい指一本一本にキスした後、その手をギュッと握ったまま唇を奪う。
「んっ…!」
「はい、これで消毒完了」
「く、口は誰も触ってないのに…」
「ダメ?」
「……ダメじゃない…です」
「じゃあもう1回」
返事を待たずに美奈子の肩を抱いて再び唇を塞ぐ。
美奈子の唇はやっぱり砂糖みたいに甘い。
「美奈子、今日はありがとう。最高の誕生日プレゼントだった」
思い出したのか美奈子の顔が一気に耳まで真っ赤になる。
「う、うん。あ、来年はケーキ作るね?」
テーブルに転がるコウプレゼンツのロウソクを手に取って美奈子がふふっと微笑む。
「俺、ケーキよりまた美奈子が食べたいな。あ、でもオマエにクリーム付けて食べちゃえば一石二鳥だ」
おでことおでこをコツンと合わせて微笑むと上目遣いの美奈子が「もうっ!」と言いながら笑ってくれた。
来年か……、生クリームにハチミツもあったらホットケーキみたいでもっと美奈子おいしくなるかな?
そんな想像をしながら、何も分かっていない美奈子にもう一度微笑みかけて7月1日最後のキスをした。
END