目を閉じたまま、美奈子の気配を探る。
俺を覗き込んで目が閉じているのを確認したらしいその後は、しばらく動きがなかったけど数分の沈黙の後突然もぞもぞと動き衣擦れの音がしたと思ったら、同時に美奈子の体重が動く気配。
スゥっと息を吸う音の後、俺の真上から少し震える声は降ってきた。
「ル、ルカくん…まだ寝ちゃダメ……」
その声の後、今度は柔らかいものが唇に触れる感触。
キスは何度もして来たけど、美奈子からしてもらうのは初めてで俺は嬉しさのあまり顔がにやけそうになるのを必死でこらえた。
触れるだけのキスに欲が出た俺は少し唇を開いて美奈子の舌を誘う。
すると遠慮がちに侵入してきた舌が俺の舌先をほんの少しだけ舐めると恥ずかしかったのかすぐ居なくなってしまった。
まだまだ未熟な拙いキス。
それでも美奈子からしてくれるキスというだけで俺の理性はかき乱される。
唇が離れて行くのと同時にゆっくりと目を開けると、ボレロを脱ぎ、キャミだけの姿で俺に覆い被さる美奈子と目が合った。
「よく出来ました。エッチしたくなったよ、俺」
もう隠すことなくニヤニヤと笑う俺を見て、月明かりの中でもリンゴみたいにまっ赤な美奈子の顔が更に赤くなるのが良く分かった。
「し、知ってたの…!?」
「ん?なんの事?」
「その顔……、絶対知ってた顔だもん!」
美奈子は俺に跨ったまま両手で真っ赤になった顔を覆うとヘナヘナと俺の胸に倒れこんできた。
そんな事されたら俺、襲っちゃうけどわかってやってる?……わけないよな。
俺はほんのちょっとだけ残る自制心をフル活動させて胸の上の美奈子をそっと抱きしめると安心したのか少し甘えた声でポツリポツリと話し出す。
「すっごく……緊張したんだよ……?」
「キスするだけで?」
「それだけじゃないもん。今日一日ずっと…」
「うん」
「……それにキスだって、私にとってはすごく大事なの」
「うん」
「でもね……」
「うん?」
「今日は……ルカくんの誕生日だから…その…」
「うん」
「キスより、もっと大事なもの……あげたい…の。ルカくんが……大好きなの」
この一言で俺の理性はさよならした。
美奈子を抱きしめたままグルリと体を回転させ、さっきとは上下間逆の体制になる。
可愛い可愛い俺の美奈子。俺の為に頑張ってくれた俺だけの美奈子。
突然視界が反転した事に驚いたのか美奈子の大きな目がパチパチと瞬いた。
瞬きするだけで可愛いなんて、ズルイな。
「俺も大好きだよ」
もう我慢できない俺はそう言うと同時に美奈子にキスをする。
少し苛めちゃった分、これからめいっぱい甘やかしてあげるから。
オマエがもうやめてって恥ずかしくなるくらい。
「覚悟してね?」