Birthday-July 1



ついに来た7月1日。

別に誕生日が楽しみなワケじゃない。

美奈子がくれる「プレゼント」が楽しみなんだ。

美奈子から7月1日にうちに泊まりに来たいと言われた時は、まさかそういう意味?なんて淡い期待を抱いたけどあの状況で寸止め食らわした美奈子に限ってな…。と期待は捨てた。

けど、この前ニーナが‘快く’例の相談てやつを教えてくれてからは捨てた筈の期待が確信と名前を変えて俺の中に居座ってる。

今日のお泊まりって……つまりそういう意味だろ?
俺にくれるプレゼントすげぇ楽しみにしてるんだけど。




ダイナーに帰ると俺と入れ替わりでコウがバイトに行くとこだった。

すれ違い様に「今日は帰って来ねぇから」って言った顔がニヤニヤしててムカついたから後ろからケツキックしてやったら倍になって返って来た。

乱暴なお兄ちゃんを持つと弟は苦労するんだ。

それでもセロハンテープで止められたカレンダーとキッチンに用意された俺の分の夕飯を見つけてさっきのケツキックを心の中でちょっとだけ反省した。

そこにあったのは半球状に盛りつけられたチャーハンとその真ん中にドンとそびえ立つ一本のロウソク。

これでいちおう誕生日を祝ってくれているつもりらしい。
センスはどうかと思うけど気持ちは嬉しかった。




部屋に行って制服のままベッドに寝転がるとめいっぱい背伸びをする。

「んーっ!これで隣に美奈子が居れば最高。早く来ないかな…」

窓から入ってくる海風が気持ち良くて俺はそのままうとうとしてしまったらしい。
ふと気付くと窓の外はもう真っ暗だった。

「……やば。今何時だ?」

携帯を開くと美奈子が来るって言ってた時間の5分前。
グッジョブ、俺。よく起きた。

部屋着に着替えているとちょうど携帯に美奈子の到着を知らせる着信があって俺は軽快に階段を下りて行く。

扉を開けたそこには可愛い可愛い俺の美奈子が待っていた。

「どうぞ、あがって?」

「お邪魔します。あ…ルカくん、もしかして寝てた?」

入口に立ったまま、小首を傾げて俺を覗き込む美奈子の白くて細い腕が伸びて来る。

「寝ぐせついてるよ?」

美奈子がちょっと背伸びをして俺の髪に触った拍子に着ていたボレロが左肩からずれて中のキャミとブラ紐が見えてしまった。

そのブラの色……俺の好きな色なんですけど。
もしかして俺の為に用意してくれた?

思わず抱き締めたい衝動に駆られて伸ばした右腕の手首を左手が必死で抑える。

まだだめだ。こらえろ、俺。

「これで直ったよ?」

俺の髪をなでなでした後ふわりと微笑む美奈子が可愛過ぎてやっぱり右手が暴走しそうになる。

でも俺は決めていた。今日、俺からは美奈子に手は出さない。

ニーナの話を聞く限り美奈子は今日俺の為に頑張ってくれるみたいだし、そんな一生懸命な美奈子が見たい。

それに……、俺が手を出さなければきっとオマエはどうしたらいいか困るだろ?
そんな顔も俺は大好きだ。想像するだけでゾクゾクする。

「部屋行こ?」

わざとニッコリ微笑んでそう言うと美奈子は何かを決意するように、コクンと頷いて頬を赤らめながら階段を上って行った。



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