ううーん…何話してんだろ…。

ソファが二人が最初に立ってた位置より奥まったところにあるせいで、二人の声が聞こえなくなってしまった。

ルカくん、とか、コウくん、とか笑い声なんかは途切れ途切れ聞こえるけど、それ以外はほとんど聞こえない。

コウが何か言うと美奈子が顔真っ赤にして顔を覆う。
そして、コウは楽しそうに笑いだす。
美奈子が何か言いながら、コウを軽く睨んだ後思わず笑ってしまう。
分かるのはそれだけ。

そんな二人のやりとりを、あーもう、なんでもっと俺の部屋よりにソファが配置されてないんだ、なんて見当違いなことを思いながら、知らず知らずのうちにくちびるを力いっぱい噛み締めていた。

そういや、コウが女と楽しそうに喋ってるとこなんて見たことないな。
コウはいつも仏頂面だから美奈子と俺と三人でいる時も今日みたいに笑ったりしないのに。
それって美奈子は特別ってこと…?
だとしたら、この状況って…。


「はぁ!?」

いきなり聞こえたコウの大声に、俺の思考は停止する。
美奈子が何か言ったらしく、遠目でも分かるくらいに顔を真っ赤にさせてうつむいている。

美奈子、何を言ったの?
最近、不二山やニーナと話してたことってもしかして今この状況と関係ある?
俺に話せないこともコウになら話せるってこと?

コウは美奈子をまじまじと見つめて何か呟く。
そして手で美奈子に近づくように促し、二人の顔の距離が数センチになる。

なんでこんなことしてんの?
ああ、もう今すぐ駆け降りていって美奈子をめちゃくちゃにしたい。
コウの前だろうが、誰の前だろうが関係ない。
前みたいにキスだけじゃ足らない。
…美奈子の全部が欲しい。
そしたらイヤって言うほど俺のモンだってことが分かるだろ?

胸の真ん中で、ここ数日でたまりにたまった『嫉妬』ってやつが一気に膨らんで爆発する音が聞こえた。

そして気づいたら、俺は二人の前に立っていた。



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