執務室のドアを開ければグレンが少し驚きつつも嬉しそうに手招きしてくれた。

「どうしたんだよ。珍しいじゃねぇか」
「うっさいだまれ」
「相変わらず俺に優しくないねぇ」
「そんなつもりない」

誰にでもこの態度。そうなんだ。でも、グレンのことはちゃんと好きだ。私や優のために色んなことをしてくれた人。だからちゃんと尊敬もしてるし頼りにもしてる。言えるわけじゃないけど。

優のこと、いつまで経っても子供って思ってたの。そんなわけないのにね。自虐的な笑みを浮かべた。私だって優のこと甘やかしてることくらいわかってる。だけど、そうしないといつまで経っても彼の姉でいれなくなる。いつか私の元を離れていくだろう。だから、怖かったのだ。私の元から離れないで欲しかった。

「翔子、俺は、何があってもお前を裏切らねぇよ」
「ん、わかってる。 ってそれ、優が私のこと裏切るみたいな言い方。」
「だー、そこまで考えてねぇよ」
「でも、ありがとな。」

扉の前で感謝を述べればグレンは手招きをしてきた。はてなを浮かべながら彼の元に行けば腕を引いて静かに抱きしめてくれた。なんか、それがあったかくて嬉しくて。どうにも涙が出そうで。

「ねえ、グレン」
「ん?」
「私ちゃんとグレンのこと好きだからね」
「分かってるっての」
「……っ!ちょ、待て!今のなし!なし」

急に恥ずかしくなって離れようとしても力ではかなわないらしくだったら、と闘おうとした、が、やめておこう。はあ、と溜息をつきながら私はグレンの腕の中で静かに夢を見ていた。




「中佐、なにしてるんです?」
「翔子が寝てんだよ」
「見てわかります」
「喰っちまいたい」
「女の敵ですね。死んでください」