1000hit*初々しい恋 | ナノ

残念ながらべた惚れ


俺に隙なんか見せん、いつもドキドキさせられるような女
そんな駆け引き上手な女が好きなはずじゃった
やのに俺の彼女は…

「まーくん!!」

「ぬぉっ」

「見て!!虹が出てるの!!ちょっと脚探してくるね!!」

駆け引き上手とは遠く離れたバカじゃった
ちなみにさっきの俺のうめき声は那美がいきなり飛びついたから

「那美、いきなり飛びつくんは止めんしゃい」

「ごめんごめん。けどまーくんに早く知らせたくて!!」

無邪気な笑顔で窓から見える虹を指す

「はっ、こうしちゃいられない!!消えないうちに出発しなきゃっ」

那美は俺から離れると慌てて駆け出そうとする
俺は那美の制服の襟を掴んで止めた

「どこ行くんじゃ。授業始まるぜよ」

「虹の脚探しに行くって言ったじゃん!!虹の脚の下には宝物が埋まってるんだよ」

目を輝かせながら真剣に俺に語ってくる那美

「那美」

思わずはぁー、と深くため息をつく

「それ作り話じゃから。虹に脚もなけりゃそこに宝もないぜよ」

「え、嘘!!」

「ほんま」

那美は途端に目に見えてわかるほどしょんぼりとする

「お宝…」

「そんなに宝が欲しかったんか?」

「うん、だってお宝を見つけてまーくんに見せたら喜ぶかなって思ったんだもん」

は?
俺のため?
驚いて俺は言葉が出んかった

「まーくん?」

何も言わん俺を不思議そうに見てくる

「宝なんていらんよ」

「?」

「那美さえおったら俺は満足じゃから」

そう言うたら那美は本当?と心の底から嬉しそうに笑った

駆け引き上手とはほど遠い俺の彼女
やけど、そんなところが何よりも愛おしい

残念ながらべた惚れ




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