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妙技師は気づきました。



side 丸井

4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ってやっと昼休み
あー、腹へった
鞄の中から弁当と朝コンビニで買った飲み物とパンを取り出す
俺らの席は固まってるから一緒に食うときは移動なんてする必要がなくて楽
俺は後ろを向いて座ればいいだけだ
いつものように後ろを向くよう座り直す

「椎名?」

椎名が自分の鞄を見て固まってる

「どうした?」

「あー、えっと…」

「弁当忘れたんか?」

「そ、そう!!もうー入れたと思ったんだけどなー」

あははと笑う椎名は何かおかしい
まさか…?

「ちょっと私購買行ってくるね」

財布を持って席を立つ椎名

「…椎名!」

「何?」

「俺も…これだけじゃ足りねぇから一緒に行く」

「これだけって…」

ちょっと引いたような顔で俺の机に広がる食料達を見る

「うっせ−、足りねぇもんは足りねぇの!!」

俺も財布を持って廊下に出る

「じゃあ、ちょっと行ってくるね?」

「ん」

仁王はパンにかぶりつきながら俺らに手を振った
俺と椎名は一緒に購買へ向かって廊下を歩く
会話はない
俺はためらいながらもさっきのことを聞く

「お前…本当は弁当忘れてねぇだろぃ?」

「…バレた?」

いたずらがバレたかのように軽く笑ってる

「ぐっちゃぐっちゃにされててさ−。体育のときかな?」

「その指も切ったんじゃねぇだろぃ?」

「切ったよ?カッターの刃で」

「なぁ…酷くなってねぇ?」

間違いねぇ
疑問系なんかで言ったけどこれは断定系
カッターの刃とかしゃれになんねーだろぃ

「そうだね−」

何でもないことのように椎名は軽く笑ってる

「けど大丈夫だから、本当」

椎名はずっと笑ってる
笑うって言うのは楽しいときとか嬉しいときとかそういう感情を表すときのもんだ
けど今のこいつのは違う
これは、辛いとか苦しいとかそういう感情を隠す、仮面だ


(俺が…その仮面を取ってやれたらいいのに)


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