メロウ | ナノ
詐欺師には秘密です。
「痛っ」
登校して教科書を机の中に入れようとしたら
何かで切ってしまったようで指から血が出てる
机の中を覗いてみるとカッターの刃
これはまた…
「古典的な…」
あの手紙が来てから数日が経ったけどこういう嫌がらせが止む気配はない
むしろひどくなっている
血の出る指に絆創膏を巻いてまた切ってはいけないからハンカチで中に入っていたカッターナイフを取る
それから適当なプリントで包んでポイ
これで大丈夫でしょ
席に戻って今度こそ教科書を入れると背中にずしっとした重み
「おはようさん、未緒」
「よっす、椎名」
「あ、おはよー二人共。仁王くん重い」
「まーくんガリガリじゃけぇ大丈夫じゃ」
重さの正体は仁王くんだった
「…否定できない」
「ブンちゃんじゃったら今頃未緒は潰れとるナリ」
「あー、確かに」
「んな重くねーっつーの!!」
「冗談だって、半分」
「冗談じゃよ、半分」
「半分って何だよぃ!?」
朝から丸井くんは元気だなー
よくそんな叫べるよ
真田くんに匹敵するんじゃないかと思う
そんな風に3人で何気ない話をしていたら相変わらず私の背中に圧力をかけてくる仁王くんがあることに気づいた
「未緒、指どうしたん?」
「指?」
見ればさっき巻いた絆創膏に血が滲んでいた
「お前それ…っ」
「教科書入れるときに切っちゃっただけだよ」
丸井くんが何か言おうとしたけど遮る
言うなって言ったのに…
丸井くんは心配した、けど不満そうな顔で私を見る
仁王くんは…わからない
もともとポーカーフェイスな仁王くんだから何を考えているのか全然読めない
ただじーっと私の指を見つめてる
「…」
「仁王くん?」
「未緒…、いや…気をつけんといかんよ?」
「…うん?」
「昼飯、今日一緒に食お?」
「え、うん、いいよ」
「ブンちゃんも入れてやってもええぜよ?」
「上から目線だな、おい。食うけど」
さっきの緊張した空気から一転
いつも通りに戻る
うん
私はこの感じが好きだ