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ピアスが手放した関係。

side財前

あれから30分くらいしてから俺は何も知らんみたいな顔してリビングに向かった
心ん中はぐるぐると嫉妬やら醜い感情が渦巻いとったけど未緒に気づかれんように顔には出さん
昼飯も食べて今は駅
明日から部活やから俺は大阪に帰らなあかん
寂しい気はもちろんするけど
今はそれ以上にこんな気持ちのまま未緒とおるんは辛いから
今日帰る予定にしとってよかったんかもしれん

「じゃあ気をつけて帰ってね」

「おん。未緒も今日は一人なんやから戸締まりとか気ぃつけや」

「気をつけるよ。あーぁ、なんか昨日まで楽しかったから光帰っちゃうと寂しいなぁ」

きっと未緒にとったら何気なく呟いた一言
やけど俺の感情を掻き回すには十分な一言やった

「なんでそんなこと言うねん」

あかん

「え?そりゃだって…」

あかん
その言葉に意味なんてないってわかっとる
せやけど…せやけど、そう言われたら少しは期待が大きなって
大きなった期待は抑えつけていた感情を溢れ出させる

「ずっと気持ち我慢しとったのに、そんなん言われたら抑えられんやん」

無意識に体…いや顔を未緒に近づけていく
これ以上はあかん
取り返しがつかんくなる
わかっとるのに顔はどんどん未緒に迫っていって

「光?…!」

気づけば未緒にキスをしていた

「…っ」

もう、取り返しはつかへん

「…なぁ未緒、知っとった?」

あぁ、もうええわ
どんなに頭で制御してももう止めることなんてできんから
いっそ伝えてしまえばええ

「俺がずっと未緒のこと好きやったって」

崩したくないと俺自身が願った関係を
俺は自ら手放した

 


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