電話越しに彼のセリフ | ナノ

まだ、切りたくないッス(赤也)

私の彼氏はわがままだ
お弁当のおかずに卵焼きがないと拗ねるし
りんごがうさぎじゃなかったときなんて
なんかすっごい機嫌が悪かった
私が年上だからそんな風にわがまま言ってるのかもしれないけど
正直、疲れる

「那美先輩?聞いてるんスか?」

なんて赤也との電話中に考えてたら
赤也が話しかけてたみたいだけど無視してたみたい

「あ、ごめん。どうしたの?」

「もー、聞いてなかったんスか?だから丸井先輩が酷いんスよ!!今日の部活でも俺のことワカメワカメって…」

それは仕方ないんじゃないかな
とは口が裂けても言えない
また拗ねちゃいそうだし

「あ、那美先輩、明日のお弁当は俺唐揚げが食べたいッス!!」

「えー、もっと早く言ってよ。材料ないから無理」

「嫌ッス!!絶対那美先輩の唐揚げが食べたいんス!!」

あぁ、またわがままが始まった
明日は無理だから唐揚げは明後日作ってあげると赤也を宥めるのに30分
本当、このわがままさはなんとかならないかな

「あ、もうこんな時間。赤也、もう切ろう?」

「…」

さっきまでべらべら喋っていた赤也が黙る
まだ唐揚げのこと根に持ってるのかな?

「赤也?」

「…まだ、切りたくないッス」

「え?」

「もうちょい、那美先輩と話してたいッス。学校じゃ、あんま会えねえからせめて電話だけでも…」

「〜っ」

前言撤回
私の彼氏はわがままだ
だけどそんなところが愛しくてたまらない


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