電話越しに彼のセリフ | ナノ

ほんまは今すぐ会いたい(忍足)

忍足侑士、私の彼氏
ただし現在遠距離恋愛中
侑士はテニスのために東京の学校に通っとって
私は大阪に残っとる

「お、那美最近侑士とどうやねん」

「謙也…」

侑士の従兄弟の謙也
謙也とは同じ学校でよう相談にのってもらっとう

「うーん、最近会ってへんからなぁ。電話もしてへんし」

テニスで疲れてるやろうから基本私から侑士に連絡はとらん
優しい彼女みたいやけどほんまは疲れてる侑士に連絡して
ウザいとか思われたくないだけ

「へ?侑士この前大阪帰ってきよったで?」

「は?」

そんなん知らん

「お前知らんかったんか?確か先週の日曜くらいや。一日だけやったけど」

先週の日曜…私が部活の大会やった日や
私も侑士みたいに強いわけやないけど
テニスをしとる

「…」

「…あー、いや、まぁ侑士も忙しかったんやろ!連絡し忘れるくらいあるっちゅー話や!!」

私がショックを受け取ったら謙也が焦って慰めてくれた
ありがたいけど正直あんま意味ない
やって連絡もないし帰ってきたのに会わんとか
それって…

「もう終わりなんかな…?」

そんな言葉がぽつりと涙と一緒に溢れてきた

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プルルルッ

夜になって携帯が鳴る
ディスプレイには侑士という文字

(あ…)

通話ボタンを押そうとしたら
今日の謙也との話を思い出す

(別れ話かな)

通話ボタンを押すのをためらってしまう
けど携帯は全然鳴り止まん

(…しゃーない)

意を決して通話ボタンを押す

「那美?最近連絡できんくてすまんなぁ」

いつもと同じ侑士の声
いや、ちょっと低くなっとる
しばらく会ってなかったんやなって実感する

「那美?」

侑士が不思議そうに聞いてきた
それもそうや
侑士の声を聞いて私は泣いとったんやから

「どないしたん?」

「…ひっく、なぁ侑士…この前大阪帰ってきたってほんま?」

これを聞いたら終わりな気がしとった
けどもう、涙も気持ちも止められんかった

「侑士は…ひっく、私に会いたくないん?」

「は?何でそうなるん?」

「やって何も知らせてくれんかったやん!!」

泣きながら思わず叫んだ

「それは…那美その日大会やったやろ?疲れてる思て、そんな時に会いに行ったらめんどい奴とか思われるんちゃうかって」

「え?」

「そう思たら会えんかった」

私は言葉が出んかった
侑士も私と一緒やった

「…侑士、私達お互い遠慮しとったみたいやね」

「へ?」

「私も侑士に嫌われたくなくて電話とかできんかった」

「なんやそれ…俺が那美のこと嫌うわけないやろ」

こんなに好きなんやから
と侑士は言ってくれた
電話越しとはいえ侑士の声にどきどきする

「これからはもっとお互い素直にならなあかんな」

「そうやね」

「なぁ那美?」

「ん?」

「ほんまは今すぐ会いたい」

「…!!私も」

「次の休みには会いに行くから」

「待ってる」

次に会ったときにはもっと電話してとか
メールが欲しいとか思い切り文句を言って
思い切り好きだって伝えよう



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