電話越しに彼のセリフ | ナノ

もしもし、俺じゃけど(仁王)


「ゴホッゴホッ」

風邪というのはなんだか心細くなるものだと思う
学校を休んで親も仕事に行って家に1人だから余計

「ゲホッゲホッ」

なんか涙が出てきたのは
咳のしすぎ
一人で寂しいからとかじゃない
うん、認めない
認めたら負けな気がする
何に?ってつっこみはなし
…私熱で完全に頭おかしいな

プルルルッ

お母さんかなってディスプレイも確認しないで電話をとる

「もしもし俺じゃけど」

「え?」

「なん?彼氏の声忘れたんか、那美」

電話から聞こえてきたのは愛しい人の声

「風邪ひいたらしいの。大丈夫か?」

「う、うん」

「そか。…泣いとった?」

「!」

「一人か?」

「…うん」

鼻声にまじって少し涙声
雅治の声に安心してさっきよりも泣いてるかもしれない

「学校終わったら行くけぇ、もうちょい辛抱しんしゃい」

「うん、ありがとう」

「ええよ。風邪んときくらいまーくんに思い切り甘えんしゃい」

「まーくんって…」

似合わない呼び方にくすっと笑ってしまう

「んじゃそれまでいい子で待っときんしゃい。あったかくしとくんじゃよ」

「うん」

電話を切る

「ゴホッゴホッ」

さっきと同じように咳が出た
自分が風邪だと自覚する
さっきと同じ一人きりの家
けど今度は寂しくなんかなかった
それはきっと、雅治の電話のおかげ
雅治が来るまでに少しでも治そうと
私は携帯を抱きしめて眠った



/ back
 


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -