妄想ラバーズ | ナノ

アナザー:屋上conflict

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昼休みは好きや

寝そべって空を見上げながらぼんやりしたり、眠かったら昼寝したり

そんな穏やかな時間が意外と好き


たまに先輩らと食堂行ったりするけど、そうやないときは大抵この貯水タンクの上におる

…何故かたまに千歳先輩と会うたりするけどな

イヤホンからは聞き慣れた曲が聞こえてきた
つーか自分の曲やしな
これは、羚奈先輩と出会ったときの曲

あの人は、他の女と違う

まあ自分もそうやからかもしれんけど、俺の趣味を知っても偏見持ったりせんし
見た目だけしか見てへんことないし…まあ自分の容姿にも無頓着すぎやけど

最近出会った1つ上の先輩のことを無意識に考えていると、突然屋上に誰かが来た

『えっと…』

え?

羚奈先輩の声…やんな?

そっと下を覗くと、この貯水タンクを背にして羚奈先輩が女子らに囲まれとった

『アンタ転校生のくせに何なん?白石くんとか忍足くんとか、テニス部にベタベタしすぎやろ!』

こいつら…3年やな
ったく、漫画ちゃうねんから

『ちょっと可愛えからって調子乗んなや!』
『痛ッ』

聞こえてきた羚奈先輩の小さな悲鳴に、頭が冷える
…何しとんねん、こいつら

『白石くん達やって転校生やから優しくしてくれとんねん!ええ加減迷惑やって分からんの?』

は?
何も知らんくせに、黙って聞いとれば…

気がついたら勝手に体が動いとった

「よいしょっと」

先輩と女子らの目が見開かれる

『こんなとこで何してはるんです?先輩?』
『ざ、財前くん…』

途端に媚びを売るような態度をとる女らに虫酸がはしる

「はあ…アンタらこそ何やねん。白石部長らも俺も、好きで羚奈先輩と一緒におんねんけど?」

転校生やから?そんなん関係あるかい
触んな、そんな汚い手ェで

俺は羚奈先輩の肩を押しつける腕を剥がした

「何も知らんくせに、何勝手なこと言いよんねん」

お前らの勝手で自己中な嫉妬で、何で羚奈先輩が傷つけられなあかんのや
どんどん頭に血がのぼっていく

『ざ、財前くん!もういいから…ね?』

先輩は俺の腕を掴んで、困ったような顔で見つめてきた

なんで…ほんまお人好しやな

「はあ…もうええわ。はよ行けや」

『え?』

『はよ失せろ言うてんねん!』

もう二度とこの人に近づくな
俺が睨むと女らはバタバタと出て行った

何で止めんねん、て思たけどむしろ止めてくれてよかった気がする
やないと、俺は…

『財前くん…その、ありがとね。…あれ?』

俺は目を見開いた
初めて見た、先輩の涙

何で俺がここまでしたんか自分でも分からんかった

頭に浮かぶんは普段白石部長や俺とヲタクトークしたり、瑞稀さんと話したりしてるときの羚奈先輩の笑顔

好きなんかは、まだはっきり分からへん

でも俺は、この人のそんな綺麗で無邪気な笑顔を見ていたい、守りたいんや


初めて見る先輩の泣き顔を見ていると、無意識に抱きしめてまいそうになった

その衝動を抑えつけて先輩の頭を撫でる
やっぱり怖かったんやろうな…

「よお、頑張りましたね。…もう大丈夫やから」

その声は、自分でも驚くほど柔らかかった


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『で、何があったん?』

放課後部活に行くと、瑞稀さんが待ってはった

「ああ…」

昼休みに起こったことを詳しく話すと、瑞稀さんの顔がみるみる険しくなった

『まあ、いつかはこうなるか思たけど…』

「瑞稀さんは、大丈夫なんすか?」

『ああ、一回だけあったけど…むしろ返り討ちにしたったから!てか普段鬼みたいに仕事しとんねんから、ちょっとはリスペクトしてほしいわあ』

「……。」


瑞稀さんはそう言って明るく笑い飛ばした

『でもおおきにね、財前。ウチの子を守ってくれて』

「いや、別に…」

瑞稀さんはニヤリと微笑んだ

『それにしても、アンタにしてはエラい気に入ってるんやな?』

「そんなんやないですわ…でも、1つお願いしてええですか?」

『ん?』


「白石部長には、今日のこと内緒にしといて下さい」


『…ええよ。さ、部活しよか!』

瑞稀さんは去り際にぼそっと青春やな、て呟いた

「青春て…」


でも、勝負はもう始まってるんかもしれん




白石夢…ですよね?
何でこんなに財前くんが出しゃばるの\(^o^)/←

次からは白石のターンなはず!すみません!


 


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