妄想ラバーズ | ナノ

屋上conflict

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"屋上"

多くの少女漫画においては、いわゆる"呼び出し"というイベントに使われる場所である

でも実際に自分がその状況に立たされるとちょっと笑えない

「えっと…」

今、私の背後には給水タンクの壁

前には数人の女子たちが腕をお組みになって立っていらっしゃる

ど、どうすりゃいいの…

『あのさ、』
「ハイッ」

思わず体を震わせると、さらに鋭い目で睨まれた
こわいいいい

『アンタ転校生のくせに何なん?白石くんとか忍足くんとか、テニス部にベタベタしすぎやろ』

してないしてない!

『ほんま、ちょっと可愛えからって調子乗んなや!』

「痛ッ」

肩が壁にガッと押し付けられる


…こういうとき漫画ならこう、イケメンが助けに来てくれるもんだよね

ってそれはないでしょ!分かってるよ!

『白石くん達やって転校生やから優しくしてくれとんねん!ええ加減迷惑やって分からんの?』

『おい、何とか言えや』

口々に浴びせられる怒声




『よいしょっと』

…え?

『こんなとこで何してはるんです?先輩?』

「財前くん?!」

給水タンクの上から飛び降りてきたのはピアス少年、財前光だった

『ざ、財前くん…』

『はあ…アンタらこそ何やねん。白石部長らも俺も、好きで羚奈先輩と一緒におんねんけど』

財前くんは私の肩を押しつけていた腕を掴んでどけてくれた

『何も知らんくせに何勝手なこと言いよんねん。』

財前くんの声がさらに怒気をはらむ
女子たちは彼のあまりの剣幕に怯えていた


「ざ、財前くん!もういいから…ね?」

慌てて止めると、彼は私と女子たちを見比べてまた溜め息をついた

『はあ…もうええわ。はよ行けや』

『え?』

『はよ失せろ言うてんねん』

財前くんが鋭く睨むと、彼女たちは背を向けてバタバタと走り去っていった


再び静かになる屋上
財前くんは黙って私を見つめていた

「財前くん…その、ありがとね。…あれ?」

無意識に涙がこぼれてきた

何も言い返せなかったのは、単に怖かっただけなのかもしれない
突きつけられた言葉が、感覚が、再び胸をしめつける

私は本当にあの人たちの側にいてもいいのかな…?

こぼれ落ちるそれは、堰を切ったようにどんどん止まらなくなって


「……ッ」

ふいに頭に手が乗せられた

『よお頑張りましたね…もう大丈夫やから』

財前くんは柔らかく言葉をかけながら、私の頭を撫でてくれた

『ほら、教室まで送りますわ』

袖で涙を無理やり拭って、私は彼に手を引かれるまま屋上を後にした


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『羚奈!?どこ行ってたん?…てかその顔、』
『瑞稀さん、後で説明しますから』

瑞稀に私を引き渡すと、財前くんはすぐに背中を向けた

「財前くん!…本当にありがと」

『…借りにしといたりますわ』

そう言って財前くんは優しく笑って去っていった


『うそ…財前のあんな顔、初めて見た』

「え?」

珍しく呆気にとられる瑞稀の言葉を聞いて、私は顔がほのかに熱くなるのを感じた





あれ?
今までのテンションは何だったんだっていうくらい重いことに(´・ω・`)

しかし自分のフラグ立てる下手さがもう…

次はこの話の財前視点です!
 


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