tell you | ナノ
意外と頼りに
部活中
今日は謙也さんと試合や
『杏奈、ちょっと来てもらってええ?』
…部長や杏奈先輩の声が聞こえる度に、なんか息苦しくなる。 今、一番先輩に近いのはきっと俺じゃない。
でも時間の差を埋める方法なんて俺には分からん
「ああ、もう!」
なかなか今日は球が決まらへん 集中せなな…
『財前?どうしたん、なんか今日おかしいで?』
謙也さん…
「いや、ちょっと調子悪いだけっすわ」
『そうかぁ?』
あかん…こんなんじゃあかんって分かってる
でもどうしても胸になんかつっかえとるねん
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最近なんか全部上手いこといけへんな…
部長… 同じクラスで同じ部活で幼なじみで家も隣ってどんだけやねん そんなとこまで無駄ないんかい
部室を出ようとしたら謙也さんに肩を叩かれた
『財前、今日俺とマクド行けへん?』
…今はそんな場合ちゃうな 謙也さんにあたってもたら悪いし
「俺あんまり金持ってへんし、遠慮しときますわ」
『たまには俺が奢ったるさかい、どうや?』
?謙也さんがこんなしつこいのも珍しいな
「ほんまですか?まあ…ええですよ」
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謙也さんと2人で寄り道するんも久しぶりやな
『美味いか?』
「はあ。ありがとうございます」
なんやろ? なんか今日の謙也さんは無駄に優しい気がする
突然謙也さんがじっとこっちを見つめてきた
「…?何ですか?」
『財前、お前ほんまに最近どないしたん?なんか悩んどるんやったら相談乗るで?』
謙也さんも杏奈先輩の友達やけど… こういうときは甘えてもええんやろか
でも変に部長とのことで心配かけるのもなあ…この人顔に出やすいし
「…いや、やから別に」 『まあ大方、杏奈と白石のことやろうけど』
俺が抑え込もうとしてたことを、謙也さんはあっさり口にした
『まあお前の気持ちはめっちゃ分かる気がするけどなぁ』
黙り込んだ俺を見て謙也さんは肩をすくめて笑った
「俺は…どうしたらええんか分からんのです」
自然と言葉が口から飛び出していく
「杏奈先輩と部長は幼なじみで…俺なんかよりもずっと長い間一緒に過ごしてきてはる。 部長は先輩のことなら何でも知ってて、なんか2人の世界っていうか…その…」
俺が一番不安に感じてることは
「時間の壁に勝てる気がせんのですわ」
胸が痛い
自分でもこんな話を誰かにするなんて信じられんかったけど なんか恥ずかしいやら気まずいやらで俺はどうしていいか分からんまま、黙り込んだ謙也さんを見つめた
『俺は、時間の壁なんか無いと思うで?』
すると謙也さんは珍しいくらい真剣な顔で言った
『確かに杏奈はびっくりする位鈍感な奴や。でも、アイツは"お前"を見てる。何も白石と比べたりなんかしてへん。』
謙也さんは俺の頭をくしゃっと撫でて、いつもみたいに笑った
『何しおらしゅうなってんねん。俺の知ってる財前光はもっと自信家でクソ生意気でクソ腹立つ後輩やで』
なんか息苦しさが和らいで、いつもの自分が戻ってきた感じがした
謙也さん…
「おおきに。謙也さんにしてはええこと言いましたやん」
『おう。頑張って来いや』
そうやな
部長がどうとか、一緒に居った時間が長いとか、そんなん関係ない
俺は、俺の知ってる杏奈先輩のことが好きなんやから
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