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最強コラボレーション

今日は雨、か…


部活も休みらしいし、杏奈先輩に会えへんのはちょっと残念やな…

ま、今日はもう帰ろか




…あれ?



「杏奈先輩?」


会いたいと思ってた先輩が昇降口におった

『あ、財前くん!』

「どうしはったんですか?こんなとこ突っ立って」

…部長でも待ってるんかな?


『それがな、傘忘れてもてん…』

え、今日降水確率80%やったやん
ほんまどんくさいというか天然というか…

「さすがっすわ…先輩」

『ちょっと!どういう意味ー?』

部活のときは結構しっかりしてはんのに…

でもまあ…これはひょっとしたらチャンスやったり


「ほんなら俺の傘入って行きます?送りますわ」

先輩はパッと顔を上げた

『え、ほんまに?でも…』


「別に俺はええですよ。風邪引かれてもうても困るし、入ったって下さい」

『えー…じゃあ、お願いするわ』

よかった…!

内心めっちゃドキドキしとった…

「ほら、カバンも持ちますわ。」

にやけそうになるのを必死で堪えながら、俺は先輩のカバンを奪い取った

『あ、ありがとう…』


やばい、先輩と帰れるとか
改めて考えたらめっちゃ幸せやな


『財前くんって意外と紳士やなあ』

先輩が笑いながら言った


そんなん、杏奈先輩だけに決まっとるやないですか


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「部長は今日どうしはったんですか?」

『なんか用事あるねんてー。会議とかかな?』


ふーん…

まあええわ、部長ナイス


『なんかお腹すいてきたなあ』


「せやったらどっか入ります?たまには奢ったってもいいですけど」

『めっちゃ上からやん!でも行きたい!』


せっかくやしなるべく長い間一緒に居りたいしな

「なんか甘いもんとかどうっすか?」

『あ、ええかも!財前くん甘いもん好きなん?』

「まあ結構。俺行きたいとこあんねんけど、そこでええですか?」

『うん!楽しみやわあ!』


子供みたいに無邪気に笑う先輩


…雨の日もたまにはええなあ



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俺の行きつけの甘味どころに連れてきた


『あ、ここのぜんざいめっちゃ美味しい!』

先輩とぜんざいとか夢のコラボレーションやねんけど

「気に入りました?」

『うん!でもぜんざいかー…財前くん、以外と可愛いとこあるねんなあ』

………ッ

いやいや、そんな可愛い笑顔で言われましても


「…先輩の方が可愛いっすよ」

先輩の顔がタコみたいに真っ赤になった

『もー…からかわんといてよ!そんなん蔵ノ介にしか言われたことないわあ』

やっぱり言うてんのかい…

ていうか…

「杏奈先輩と部長ってめっちゃ仲良いっすよね」

『そう?あーでも同じクラスやし、幼なじみやからなあ』

え、幼なじみ!?

初耳やわ…


「へー…そうなんすか。」

『まあマネージャーなったんもアイツがきっかけやし』


なんか、めっちゃもやもやする


「まあそれはそうと先輩、」


何となくこれ以上その話が聞きたくなくて、俺は強引に話題を変えた

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甘味どころを出て、先輩の家に向かった

もうだいぶ暗くなってて、なんか今更やけど先輩と一緒に下校したんやなあって思った



「先輩の家このへんやったんすね。」

『うん!こんなとこまで送らせてもてごめんなあ…』


「気にせんといて下さい。俺としては先輩がドジって傘忘れてくれはってよかったわ」

やからこそ今日一緒に居れてんし


『え、あ…私も財前くんが一緒に帰ってくれて嬉しかったで…?』


…ちょお、こんな状況で照れながらそんなこと言われたら、


「杏奈先輩、俺」
『お、今帰ってきたんか?』

突然足音が聞こえてきた

振り返るといつもの笑みを貼り付けた部長が悠然と立っていた


『遅かったなあ、2人で何しとったん?』

『あんなあ、財前くんにぜんざい奢ってもろてん!』

先輩は嬉しそうに言った、でも


「なんで部長がこんなとこ居るんですか?」

『え?だって俺んちコイツの隣やし』


今まで暑いくらいやったのに、急に身体が冷えてきた


「財前、今日は杏奈送ってくれておおきに。さ、家入るで」

部長は先輩の腕を引いて家の方に向かおうとした


『ちょ、蔵ノ介!ああもうごめんな財前くん…今日はほんまにありがとう!!』

「いえ…ほなまた明日…」

部長は最後にもう一度振り返ってニヤリと笑った

肩を並べて去っていく先輩らの背中が、異常に遠く見える

俺が知らない先輩を部長は知っている
先輩にとって部長はどんな存在なんやろう

最後に見た部長の笑顔が脳裏に焼き付いて、俺はしばらくその場に立ち尽くしたままやった