短編 | ナノ


俺には?


「蔵ーっ」

うちのマネージャー、那美先輩には困った癖がある

「お疲れっ、教室行こ!!ついでに謙也も!!」

「俺はついでかい!!」

「那美、そろそろ離れてくれな俺動けへんねんけど」

「あ、ごめんごめん。つい癖で」

那美先輩の癖、それは抱きつき癖
男でも女でも、老若男女問わず那美先輩は抱きついてくる

「那美ー、ワイも朝練頑張ったでー」

「金ちゃんもお疲れー。偉い偉い」

白石部長から離れて今度は金ちゃんに抱きつく那美先輩
ほんま、誰にでも抱きつく人やな

「光もお疲れー」

「…お疲れ様です」

けど俺にだけは抱きついてこーへん
いや、入部したての頃はみんなと同じように抱きつかれとったけど
ある時からぱったりと止んだ

「光?なんか元気ないやん。大丈夫?」

「平気っすわ」

「そう?しんどかったら放課後練休みよ?じゃっ」

びしっと敬礼してちょっと先に進んでた白石部長と謙也さんを追ってった

今度は謙也さんに飛びついとる
勢いありすぎて謙也さんこけとるやん
ダサ

「何で俺には抱きついてこんねん」

…いや、別に抱きつかれたいとかちゃうで?
ただ何か嫌われるようなことしたんかとか
気になるだけやから…
って何俺自分に言い訳しとんやろ
ダサいわー
謙也さんのこと言えへんやん




昼休みは屋上でレギュラーメンバーと昼飯を食べる
俺は持ってきた弁当を持って屋上のドアを開けたら
すでにみんな揃っとった

「遅いで財前」

「授業がなかなか終わらんかったんですよ」

「光〜、隣おいで〜」

ちょいちょいっと自分の隣を手招きする
あんたは俺を嫌ってるんか嫌ってないんかはっきりしてくださいよ

「さっき家庭科でぜんざい作ってん」

にっこりと俺に差し出す
なるほど、俺を隣に呼んだんはこのためか

「ども…」

一口食べてみる
うん、美味い
マネージャーやるだけあって那美先輩は料理とか上手いと思う

「美味いっすわ」

「ほんま!?よかったーっ」

那美先輩が俺に抱きついてきた

「あ…」

せやけどすぐに離れて気まずそうにする

「…前から思ってたんすけど、何で先輩俺には抱きついてこないんっすか」

「え?」

「なんか俺嫌われるようなことしました?」

「ちゃうねん!!なんかな、蔵とか謙也とか金ちゃんとかは何もないねんけど、光に抱きついたらなんか…心臓がばくばくするねん!!」
それって…

「1年くらい前やったかな?なんか光に抱きついたら変な感じしだしてな、なんか胸がめっちゃ苦しいし、何でかなって…それで考えてんけど」

つまり…

「これ体に悪いなって!!」

「…は?」

那美先輩の顔は真剣そのものやった

「やから光が嫌いやからとかじゃなくて、自分の体のためやから!!」

やから別に気にせんといてー
とにっこり笑う那美先輩
なんやねん、この人…阿呆?

「先輩」

「ん?」

「何で俺に抱きついたときだけ心臓ばくばくしたり、胸が苦しくなるか教えましょか?」

「え、光お医者さん志望?」

「ちゃいますよ」

あぁ、阿呆やこの人

「やのにわかるん?」

「まぁ…」

「博識やな!さすが天才財前くん。で、何何?」

「先輩が、俺のこと好きやからですよ」

俺の一言に那美先輩は固まった

「んで、何で俺が先輩が抱きついてこんのか気にしとったんかっていうと、」

俺は那美先輩を抱き寄せた

「俺も先輩が好きやからっすわ。まぁ、俺も今気づいたんですけど」

俺の腕の中の先輩は固まったまま真っ赤やった

「まだ心臓ばくばくします?俺めっちゃしてるんですけど」

「…してる。光のも、わかる」

小声でぼそっと呟いた
可愛ええな、この人

「じゃあ、今日から先輩の彼氏は俺ってことで」

こくん、と那美先輩は頷いた

「…お前ら俺ら忘れてへん?」

「あ…」

周りを見れば黒い笑顔を浮かべた白石部長に真っ赤になった謙也さん、まぁつまりテニス部の面々

「すんません、忘れてました」

「えぇ度胸やな」

「なーなー千歳ー。どういうことなん?」

「金ちゃんは知らんでよかよ」

「お、お前ら何こんなとこで…こ、告白とか、しとんねん!!」

「いやーん、よかったわね那美ちゃん!!財前くんオ・ト・コ・マ・エ」

「浮気か、死なすど!!」

「色即是空」

いや、最後意味わからんのですけど

「まぁこういうことなんで、先輩ら那美先輩に手出さんといてください」

そう言って俺は今まで先輩に抱きついてもらえんかった分、思いっきり抱きしめた

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