短編 | ナノ


あなたのお家はどこですか


「ねぇ、仁王の家ってどんな感じ?」

それは私、仁王、ブン太、赤也の4人で一緒に教室でお弁当を食べていた昼休み。
なんとなーく思い立った疑問。

「そういえば俺も仁王先輩の家ってどこにあるかも知らないっス」

「そーいや俺も」

「そりゃあ教えたことないからのぅ」

「教えてよ」

ブン太の家にも赤也の家にも行ったことはある
3人も私の家は知ってるはずだ
仁王にいたってはよく家の前まで送ってくれるし

「嫌じゃ」

「何で?」

「俺は好きな子しか家にいれん」

「何、乙女ぶってんの?似合わねぇぞ」

「ブンちゃん俺の家に来たいなら惚れさせてみんしゃい」

「それ絶対無理だろぃ」

くくっと喉を鳴らして笑う仁王。
ブン太は仁王の乙女発言にドン引いてる。

「っていうか仁王先輩って女子好きになったりするんスか?」

赤也、仁王も人間なんだから。

「どうかのぅ」

え、肯定ではないの!?
否定の可能性もありなの!?

「何じゃ、那美」

「いや、なんか仁王がかわいそうな人に見えてきて」

「勝手に否定にするんじゃなか。俺だって恋くらいするわ」

「うわっ、仁王と恋って言葉が似合わねえー」

さっきまでドン引いてたブン太は今度はけらけら笑ってる。
忙しいやつだな

キーンコーンカーンコーン

「あ、昼休み終わりかー」

「ほら、赤也さっさと帰れよ」

しっしっと手で追い払う。

「ちょっ、ひどくないッスか?俺邪魔者みたいじゃないッスか!!」

「はいはい。赤也早く帰りなよ。授業始まるよ?」

「那美先輩否定はしてくれないんスね」

あぁ、心なしかワカメがしなびて見える
あとで水でもかけてやろうかなんて思いながら席につく
ちなみに私はブン太の後ろの席
仁王だけ少し離れている

「ねぇねぇ、実際どんな家だと思う?」

「お前まだ引きずってのかよぃ!しつけーな」

「だって気になるじゃん!!あの仁王だよ?どうする?TDLのミニーの家みたいだったら!?」

「ぶっ…おま…そりゃありえねーだろぃ!!」

「わかんないよー?何て言ったって詐欺師だよ、やつは!!」

「まぁ確かに…あんま想像つかねーな」

「でしょでしょ!?だからさ、今日の帰りつけてみようよ!!」

「は?」

「だから!ストーキングしよ!!」

「おい、華の女子中学生が目輝かせて言うなよ」

なんて言いながらもなんだかんだ付き合ってくれるというブン太
私、君のそういうところ好きだよ



放課後
赤也も誘っていざストーキング!!
少し離れたところから私達3人は仁王を見ている

「あ、スーパーに入りましたよ!!」

「よし、突入〜っ!」

「テンション高ーな。外で待ってりゃいいだろぃ」

「それじゃ何買ったかわかんないじゃん!!」
私と赤也はノリノリで中に入っていく
その少し後ろにブン太が呆れながらもつづく

「えーと、いた!!」

買うものが決まってたのか私達が入り口でごたごたしているうちに仁王はすでにレジにいた
カウンターにはにぼし

「にぼし…?」

「出汁でもとるんスかね?」

「つーかお前らここいたらバレんだろ!外で待つぞ!」

バレるの気にするとか…ブン太も結構乗り気じゃん
私達は入り口の影に隠れて出てくる仁王を待つ
すぐにスーパーの袋を持った仁王が出てきた

「仁王先輩…スーパーの袋違和感有り過ぎっスよ」

「中に入ってるのにぼしだしね」

なんだかおもしろくってくすくす笑いながらまたあとをつければ
今度は公園についた
スーパーの袋から買ったにぼしを取り出して袋を開ける

「お、猫」

すぐにこの公園に住みついてるらしい野良猫が寄ってきた
仁王は猫たちににぼしをやる

「餌付けっスね」

「そーいやあいつ、学校でもやってたぜ」

「こういうとこを見て女子はキュンとするんスかね?」

「そうなの?」

「いや、お前は違ーから」

「おいこら」

なんてくだらないやりとりをしているうちににぼしをやり終えたようだ
1匹ずつ猫の頭を撫でて仁王は立ち上がる

プルルルル…

「ちょっと赤也!?」

「すんませんっ…もしもし?…はぁ?わかった。帰るよ」

「え、赤也帰るの?」

「すんません。なんかお袋が塩がないから買ってこいって…俺帰ります。じゃっ」

ダッシュで去っていく赤也
そういえば赤也のお母さんは最強、って感じの人だったな
早く帰らないと後が大変なのか

「赤也も帰ったしもう止めるか?」

「なんで?ほら、行くよ!!」

ぐいっとブン太の手を引っ張る
赤也が電話しているうちに仁王がもう行ってしまったのだ
早く追いかけないと



それからも仁王は本屋さんに寄ったり
駄菓子屋さんに行ったりとなかなか家に帰らない
今はコーヒーショップでコーヒーとベーグルみたいなのを食べてる
くそぅ、仁王のくせにおしゃれなものを食べやがって

「なぁ、もう諦めようぜ?俺弟とか待ってんだけど」

「うー、じゃあもうブン太は帰っていいよ」

「お、まじ?その一言待ってたぜぃ。じゃーな」

「え、ちょっ、ブン太!?」

ブン太はさっさと帰る準備をしてコーヒーショップを出て行った
う、裏切り者…!!
いいよ、私は絶対最後までやり遂げるんだから!!
なんて思っていたら仁王もコーヒーショップを出ていた

「やば…」

私も急いでコーヒーショップを出る

「よう」

「げ…」

「人を化け物みたいに言うんじゃなか」

コーヒーショップの出口には仁王がにやにやと笑って立っていた

「まさか気づいて…?」

「まあの」

一気に脱力
さすがは詐欺師、上手く踊らされた気分だ

「で、何でつけとったんじゃ?」

「それはー…」

「ま、大方俺の家でも来ようとしとったんじゃろ?」

バレてる!?

「来させたくなかったからいろんな所寄ったりしたの!?」

「いや、那美だけになるの待っとったんじゃよ」

「は?何で」

仁王はくくっと笑うと私の耳元に顔を近づけてきた
ち、近い…っ

「好きな子しか家に来させんって言うたじゃろ?」



「真っ赤じゃよ?」

「そそそそそれって…」

「んじゃ、俺ん家行くかの」

いまだに状況を把握できてない私の手をとって歩き出す

「ちょっと仁王!?」

「ん?」

「今のって…つまり…」

告白?

だんだん声が小さくなりながら私は聞いた

チュッ

「こういうことじゃよ」

「〜っ」




翌日

「おーす!で、昨日は仁王ん家分かったのかよぃ?」

「あー、分かったのは分かったんだけど…」

「おはよーさん。那美」

後ろから抱きついてくる仁王
私は恥ずかしさで顔が熱くなるのがわかった

「ちょっ」

「お前ら何くっついて…まさか!?」

「そういうことじゃ」

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