短編 | ナノ


しゅがーすまいる


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「はあ……」

せっかくの昼休みだというのに、私は窓際の席で1人溜め息をついていた

どうしよっかなー…

『どしたん?古西』

「白石くん…謙也は?」

キラッキラしたオーラを放出しながらクラス一のイケメンが話しかけてきた

白石くんは私の彼氏、忍足謙也の親友だ

『謙也ならまだ放送室ちゃう?それより、溜め息なんかついてどうしたん?』

「あー…うん。もうすぐ謙也の誕生日やん?何あげればええか分からんくて…」

謙也は私の、いわゆる初カレというやつだ

今まで男子にプレゼントとかあげたことないから全く何も思いつかない
イグアナグッズとか?いや、それはないか

「白石くん、何かええアイデアない?」

『なるほどなぁ……お、アレはどうや?』

「え!?なになに?」

白石くんはにっこり笑って言った


『古西の手作りでお菓子とか』

…そ、そうきたかああああ!

ちなみに私はめっぽうお菓子作りとか苦手というかド不器用である

「そ、それはちょっと…」

『よぉ考えてみ?謙也にそんなん渡したら…』

謙也の反応を思い浮かべる
…うっわ、めっちゃ喜びそう

「う…」
『あー!!白石!お前誰の許可得て俺の那美に近づいとんねん!』

謙也!
聞かれてない…よね?

『別にええやんけ!なあ、古西?』

「うん、そんな大した話してへんし!」

後ろから抱きつく謙也の腕を引っ張る
よし、ごまかせた!

とはいえ……やっば謙也の喜ぶ顔が見たいしなあ

謙也の腕にもたれながら、私は決心した

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あれから何度も練習を重ね、ついに謙也の誕生日の前日になった

火傷はするわ、指は切るわでボロボロになったけど…

「喜んでくれるかな…謙也」

ドキドキしながらオーブンの中をのぞき込むと、今までで多分一番マシな出来だった

美味しくはないかもしれない
それでも私は、いつもめいっぱい愛情をくれる謙也に、恩返しがしたい

「あっつ!!」

…でもやっぱり不安だ

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ついに当日
教室に入るといつも通り謙也は白石くんと話していた


『那美!おはようさん!』

「おはよう。なあ謙也、部活終わるん待っとくから…今日一緒に帰り、たい」

うわ!なんか恥ずかしい

『ほんま!?めっちゃ嬉しいわ!…でも急にどしたん?』

『あほ。お前今日誕生日やろ…』

『あ!せやったせやった!おおきにな、那美』

忘れてたのか…
でもまあ、いつも自分より他人を優先する謙也らしいけどね
私はそういうとこも好きですよ


ふと自分の持ってきた紙袋に目をやる
喜んでくれるといいな…

顔を上げたらにやにやしてる白石くんと目が合ってものすごく恥ずかしかった

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『那美ー!遅なってごめんな』

「ええよ。部活おつかれさま!」

おおきに、と笑う謙也と並んで校門をくぐる

謙也と2人で下校するなんて初めてじゃないのに、プレゼントを渡すドキドキが加わっていつもより緊張する

空は綺麗な夕焼けで、謙也の髪が透けてキラキラしていた

「謙也…」

『ん?』

「誕生日、おめでとう…それでなっ」

紙袋を抱えて1つ深呼吸をする

「これ、プレゼント!」

下を向いたまま、私は強引に紙袋を謙也に押し付けた
ああもう、何でもっと可愛らしく渡せないのかな

『…開けて、ええ?』

私が頷いたのを見て、謙也は箱を開けた
ふわっと甘いケーキの香りが漂う

「私、めっちゃ不器用やから…全然美味しくないと思うけど『那美』」

見上げると謙也の顔は真っ赤に染まっていた

『うわ、どうしよ…めっちゃ嬉しい』

謙也はケーキをそっとしまうと私の手をとった

『…手ェ傷だらけやんか』

「あ、めっちゃ火傷とかしたから…」

不器用でごめん…
恥ずかしくて俯きながら呟いた私を、謙也は急に抱きしめた

『ほんま…可愛すぎるっちゅーねん!』

「謙也…」

私はこの人を、喜ばせることができたのかな?
それなら…


「おおきに…俺ほんまに幸せや」

夕焼けをバックに満面の笑みを浮かべる謙也が眩しすぎて

「なあ…謙也」

私はちょっと背伸びをして謙也の頬にキスした

『なッ…!ちょ、なッ、那美!』

口元を押さえてますます真っ赤になる謙也

「誕生日プレゼントの…おまけ的な?」

うわわわわ
自分で言っといてというかやっといて何だけどすごく恥ずかしくなってきた

ていうかこんな路上の真ん中で2人して真っ赤になって何してんだろ…

しばらく2人で向き合ってると、謙也は私をそっと抱きしめてキスした

『ほんまおおきにな!那美、大好きやで…』

私は何も言わずに謙也の胸に顔をうずめて頷いた


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