短編 | ナノ


包帯の彼


※この話はシャンプーの彼女の彼女sideとなっております
蔵ノ介さんの名前はいっさい出てきません
名前変換も少ないです


(今日もいた)

毎朝電車のドアの近くに立つ左手に包帯を巻いた男の子
何で包帯巻いてるのかなってずっと見ているうちに
眠そうな顔や笑った顔にどんどん引き込まれていって
名前も知らない話したこともない、ただ毎朝同じ車両なだけのその彼に
私は恋をしていた

----------------

「那美もいい加減話しかけてみればいいのに」

「無理だよ!!変な人に思われる!!」

うん、絶対無理
だいたい何て声かけるの?
いつも車両一緒ですよね?
その包帯、どこか怪我してるんですか?
車両一緒って私しか気づいてないかもしれないじゃない
包帯って触れられたくない怪我かもしれないじゃない
やっぱり無理

「けど話しかけなきゃ何にも始まらないよ?」

「う…」

それはそうなんだけど…

「でも無理だよ−」

あぁ、私はきっとヘタレだ

-----------------

帰りの電車はいつも少し期待しながら朝と同じ車両に乗る
といっても会ったことなんてないんだけど…

ガー

ドアが開いて電車に乗り込む

(嘘…)

彼がいた
電車は朝よりもすいている
彼の隣も空いていた

(こんなチャンスきっともうないよね)

意を決して彼の隣に腰を下ろす
恥ずかしいからちょっと間を空けて

彼は何かの本を読んでる

(話し、かけなきゃ)

けど本を読むその横顔がすごく綺麗で
見とれてしまって何も言えない

(やっぱり無理だよ−ヘタレだもん)

そうこうしているうちに私の駅
がっかりしながら私は電車を降りた

-----------------

向かいのホームまで来たら後ろからバタバタと足音が聞こえてきた

「なぁ」

ポンポンと肩を叩かれた
振り返りながら置かれた手を見たら包帯が巻かれていた

「これ、落としたで」

「え?あ、本当だ。ありがとうございます」
彼だった
包帯の巻かれていない方の手には私の生徒手帳
受け取ったら二人とも黙ってしまった

(…きっとこれは神様がくれたチャンスだよね)

私はおそるおそる声を出した

「あの…」

「え?」

「電車…いつも一緒ですよね?」

…ここから何か始まればいいのにと強く願った

back

<
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -