※この話はシャンプーの彼女の彼女sideとなっております
蔵ノ介さんの名前はいっさい出てきません
名前変換も少ないです
(今日もいた)
毎朝電車のドアの近くに立つ左手に包帯を巻いた男の子
何で包帯巻いてるのかなってずっと見ているうちに
眠そうな顔や笑った顔にどんどん引き込まれていって
名前も知らない話したこともない、ただ毎朝同じ車両なだけのその彼に
私は恋をしていた
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「那美もいい加減話しかけてみればいいのに」
「無理だよ!!変な人に思われる!!」
うん、絶対無理
だいたい何て声かけるの?
いつも車両一緒ですよね?
その包帯、どこか怪我してるんですか?
車両一緒って私しか気づいてないかもしれないじゃない
包帯って触れられたくない怪我かもしれないじゃない
やっぱり無理
「けど話しかけなきゃ何にも始まらないよ?」
「う…」
それはそうなんだけど…
「でも無理だよ−」
あぁ、私はきっとヘタレだ
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帰りの電車はいつも少し期待しながら朝と同じ車両に乗る
といっても会ったことなんてないんだけど…
ガー
ドアが開いて電車に乗り込む
(嘘…)
彼がいた
電車は朝よりもすいている
彼の隣も空いていた
(こんなチャンスきっともうないよね)
意を決して彼の隣に腰を下ろす
恥ずかしいからちょっと間を空けて
彼は何かの本を読んでる
(話し、かけなきゃ)
けど本を読むその横顔がすごく綺麗で
見とれてしまって何も言えない
(やっぱり無理だよ−ヘタレだもん)
そうこうしているうちに私の駅
がっかりしながら私は電車を降りた
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向かいのホームまで来たら後ろからバタバタと足音が聞こえてきた
「なぁ」
ポンポンと肩を叩かれた
振り返りながら置かれた手を見たら包帯が巻かれていた
「これ、落としたで」
「え?あ、本当だ。ありがとうございます」
彼だった
包帯の巻かれていない方の手には私の生徒手帳
受け取ったら二人とも黙ってしまった
(…きっとこれは神様がくれたチャンスだよね)
私はおそるおそる声を出した
「あの…」
「え?」
「電車…いつも一緒ですよね?」
…ここから何か始まればいいのにと強く願った
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