Black×Black | ナノ

さすが魔王の跡継ぎ




「ど、どーも…」

『何でお前が…』

…そりゃあ男子の部室に私が居たらびっくりするわな

『って…財前?!お前行事は……サボりか』

『はい、そうっすけど』

何でこの子こんなに堂々としてんの…

白石は溜め息をついて、また私に向き直る

『まあその説教は後にして…九条は何で?』

「ああ、渡邊先生からプリント預かって。それと今日なかなか顔出されへんって伝えるようにと」

『あー…なるほどな。おおきにな』

私の手からプリントを受け取って白石はベンチに腰を落とす


…ん?

なんか変じゃないだろうか

頭の中に引っかかった違和感に首を傾げていると、財前くんがにやりと笑って口を開いた

『部長、えらい大人しいやないですか。九条先輩に対しても…いつも朝に中庭で話してはるときに比べたら、えらい違いですね?』

『「え」』

『ああ、あそこ多分俺しか通らんから大丈夫ですよ?』

ああそう、よかった……じゃなくて!

そうだ、それだ

白石が私に"おおきに"なんて
しかも憎まれ口も一切なしに

『さては俺と九条先輩が2人で居ったん…気にしとるんやないですか?』

『おまっ…!財前!!』

…ん?話がヨメナイ


「どういうこと?」

『お、お前はええねん!早よ帰れや!』

「はあ?せっかくわざわざお使いに来たった私によおそんなこと言うわ」

『はいはい、どうもアリガトウゴザイマス。これでええやろ?』

「うわ、うっざ!めっちゃ棒読みやんか」


ああ、何というか…いつもの白石だ
…って、私も何でほっとしてるんだろ


『ぷっ』

いつものようにぎゃあぎゃあ言い合いを続けていると、途端に財前くんが噴き出した


『いやー、ええもん見れましたわ。やっぱ九条先輩と白石部長引き合わせたら面白い思いましてん』

え?

「もしかして…財前くん、そのために私を部室で待たせた?」

恐る恐る尋ねると、この一つ年下の少年は爽やかな笑顔を浮かべた

『そんなん当たり前っすわ。暇つぶしに?みたいな』

暇やったし、と付け加えて彼は上機嫌だ


「こんのッ…クソガキ…」

『財前…お前なぁ…』


さすが白石の後継者だ、恐ろしい…!

『ほんま先輩ら、普段からそうしとけばええのに。アイドルは大変ですね』

「はは…」

いつまでもマイペースな彼にものすごく疲労感を覚えつつ、私はようやく立ち上がる

「じゃあ私…帰るわ」

『自主練でもするん?』

白石に向かって頷くと、そっか、とだけ言われた



『待って下さい九条先輩、せっかくやし俺らと練習しません?…ちょうどええのが来たみたいやし』


ドアの開く音に振り返ると、金髪の生徒が飛び込んできた

『なんや白石!先来とったんか!…ってあれ?何で財前?え、それに九条さんまで居るやん!何で?』

…何だろうこの空気読めない感じは


忍足くんの質問には応えず、財前くんはまたにやりと笑う


『謙也さんと俺、部長と…九条先輩でダブルスしません?』


うわ、これはまた…ますますややこしくなってきた



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