Black×Black | ナノ

とんでもない後輩




今日は下級生たちは行事があるみたいで、三年生だけ早く終わった

どうしよ、部活までだいぶ時間あるかもな…

とりあえず顧問を探そう、と職員室に向かう


『お、九条ー』

突然の呼びかけに振り向くと、ひらひらと怪しげな雰囲気の人が手を振っていた

「あ、渡邊先生…どうされました?」

男子テニス部顧問……いかん、イヤな奴の顔思い出しちゃった

脳裏に浮かんだ白石のムカつく笑顔を素早く消し去り、営業用の笑顔を浮かべる


『すまんけど、これ白石に渡しとってくれへんか?ほんで、今日忙しゅうてなかなか顔出されへんって言うといてくれん?』

…よりによって白石に伝言か

我慢だ、我慢しろ九条真白

「分かりました!確かに伝えておきますね」

プリントを受け取ってにっこりと微笑むと、ほな頼むわーと言いながら渡邊先生は去って行った

はあ…まあ時間あるから別にいいか


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顧問に聞いたところ、やはり部活まで時間がだいぶある

「自主練でもしよっかな」

先に部室で着替えを済ませ、預かったプリントを持って男子テニス部の部室を訪ねた


コンコンと扉をノックすると、中から人の気配がした

白石かな?

しかし、扉を開けてくれた人物を見て私は固まった

「え…?」

『…何か用ですか?』

出てきたのは、男テニ2年レギュラーの財前光くん

あれ、2年?2年生だよね?

「財前くん…行事は?」

思わず素朴な疑問を…

『ああ、面倒くさいんでサボリっすわ』

財前くんは堂々と言って1つ欠伸をする
…さては部室で寝てましたね


「そ、そう…あ、それでね、白石くんいるかな?」

『ああ、部長ならもう来る思いますよ。部室入って待っときます?』

ん、と財前くんは私を室内に招き入れる

まあすぐ来るなら…いいか


初めて入る男子テニス部の部室

壁に目をやると、数々の賞状やら何やらが飾られていた


確かにウチは男子の方が強いけど…
今は、今はそうでも、いつか女子も並べるくらいに強くなりたいと思う
私の力でどこまでやれるかは分からないけど


『…どうしました?』

財前くんの声にハッと気がつく

「あ、ごめんなさい…ちょっとぼんやりしちゃって」

すると財前くんはじっと私の顔を見つめた
真っ直ぐな黒い瞳に、どうしていいか分からなくなる

「どうかした?」

『九条先輩…ですよね?』

「え、ええ」

返された質問に拍子抜けしながら答えると、彼はふっと笑った


『あの…俺にまでわざわざ猫被らんくてもええですよ?』


……へ?

『先輩、部長と同じクチでしょ?"白雪姫"でしたっけ?ほんま大変ですね』

「ちょ、え…なんで」

完全に動揺しながら聞くと、財前くんはまたアッサリと答えた

『何となくですわ。なんか部長と似てますもん』


…驚いた

今まで白石以外で私の猫かぶりに気づいた人なんていなかったから

って…あれ?

「今、なんて言った?」

『え?部長と似てますわって…』

白石と私が…似てるだと?

「いやいやいやいや。それだけはほんまに勘弁してマジで」

『あ、部長が来たみたいっすわ』

財前くんが私の言葉をガン無視して指差すと、扉が開いて白石が入ってきた


『え?財前……と、九条?』

ぽかんとする白石

沈黙する空気

未だに動揺している私


ああ、もう…なんてタイミングの悪い



ーー

 


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