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かくとだに


※白石視点


幼い頃からずっと一緒に育ってきた

家も隣で家族ぐるみのお付き合い

いかにも、典型的な"幼なじみ"


さながらその関係は、兄と妹の様で――



『蔵兄ー!』

学校に向かう途中、後ろから走ってくる気配がした

足を止めて振り返ると、見慣れた幼なじみの姿

「おはよう、那美」

『もう!何で先行ってまうん!』

那美は不満そうに頬を膨らませた

「すまんすまん。って…お前彼氏はどないしたん?」

『え?昨日別れたけど』


…またか

「…何で?」


『えー?やっぱ私には蔵兄が一番かなって』

…冗談のくせに
ほんま、俺の気持ちも考えてほしい

「さよか…まあほどほどにしいや」

『…うん』

こう言うと那美は、いつも少し悲しそうな顔をする


『あっ、私今日日直やったかも!ごめん蔵兄!』

もう校門に差し掛かろうかというときに、那美はいきなり走り出した

…慌ただしいやっちゃな



『あ、古西さんや。相変わらずめっちゃ可愛えよな』

『おん。また彼氏と別れたんかな?…まあまたすぐできる思うけど』

『来るもの拒まず、やもんなー』

そんな会話をしながら、男子生徒たちが前を歩いている


確かに那美は誰かと付き合うてはすぐに別れて、また誰かと付き合い出す

何であいつがそんなことばかりするようになったんかは、分からん


せやけどな、那美

俺はお前がそんな風に言われるんが嫌やねん

それに



『白石先輩や。ほんまかっこええよなー…あれ?そういえば那美あの人とは付き合ったことないん?』

「あー…蔵兄は幼なじみやし…そんなんは無いなあ」

『えー、そうなんやぁ』



"来る者拒まず"?

じゃあ行く前から拒まれてる俺は一体どうしたらええねん


俺は、行き場のないこの想いを持て余すことしかできへん

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薄暗い帰り道をぼんやりと歩く

そういや今日は誰も家おらんかったな…晩飯どうしよか

ん?


『…ら……ッ』
『お……ろ…!』

ぼんりと歩いた、少し先から誰かが揉めてるみたいな声が聞こえてきた

あれは……那美!?


『だからッ…もう離して!!』
『何でやねん!お前誰でもええんとちゃうんか!』
『…私は、もうそういうん止めるから!』


「…お前、何しとんねん」

那美の腕を掴む男の腕をひねり上げる

「く、蔵兄!」
『…白石先輩ッ!?』

俺のこと知ってるんならウチの学校のやつか…

「離せ言うてんねんからはよ離せや」

『…ッ!』

ドスを利かせて言うと、男は慌てて逃げていった

那美の腕をそっと持ち上げる

「お前…これ」

その白く細い腕には真っ赤な痣がついていた

『あの…蔵兄…』

頭の中で何かが爆発したんが分かった

那美の手を掴んで走り出す

『え!?ちょ、蔵兄!』

「ええから来い!」


ーーーーーーーーーー

那美を家に引っ張り込み、壁に背中を押し付ける

電気もついてないけど、それも気にならんかった

『蔵、兄…』

ああ、こんな乱暴なマネしたら俺もあの男と同じやんか

でも、もう止められへん


「なんで…」

『え?』

「なんで俺じゃあかんねん…!俺は、こんなにお前のことが」

頭も真っ白で、ただその細い身体を抱きしめる


「…ずっと前から、俺はお前が好きやった」

自分でも腕の力が強くなるのが分かった

拒まれるって分かってるくせに、俺もなんて往生際が悪いんやろ


ふと気がつくと、那美の身体が震え出していた

見るとその目からは涙が溢れていて

「ッ…!ごめ」

急に冷えた頭で慌てて離すと、那美は首を振った

『ちゃうねん…私はずっと、ずっと蔵兄のことが好きやってん』


…え?

『でも、蔵兄は私のこと"妹"としか見てくれんくて…自分の気持ちを隠すために、忘れるためにいろんな人と付き合うたけど…』

彼女はそこで一度言葉を切った


『でもやっぱり、蔵兄が好きで…!蔵兄やないと、あかんって…!』

「那美…」

胸がぎゅっと締めつけられる

俺は一度離したその身体をもう一度抱きしめて、そっと口づけた

「ごめん…これからはずっと、俺が側に居るから、せやからもうこんな痣…作らんといて」

『…うん』

俺のシャツに顔をうずめて泣き止まない背中を、優しく撫でた

「えらい遠回りしてもうたなあ…」

『蔵、兄…私…ッ』

「あかん。もう"兄貴"やないやろ?」

俺にとっても、もう"可愛い妹"やなくなった

もっとも、今までも妹とは思ってへんかったけど

ーーーーーーーーーーーーーー

家から一緒に登校する

それは今までと同じやけど…


『あ、古西さんや』

『那美ちゃーん、また一緒に遊ぼなー?』

…虫除けが必要やな

「那美」

腕を掴んで引き寄せる

『蔵?…んっ!』


不意打ちでびっくりしたんか、那美の顔は林檎みたいに赤くなった

「ま、こういうわけやから…俺の那美に近づいたら…分かるやんな?」

固まってる男子たちに向き直ってにっこり笑うと、そいつらはガクガク頷いてくれた


「これでよし、と…」

『ちょっと蔵!こんな人前で…びっくりしたやんか!』

「いてっ」

顔を真っ赤にしたまま那美が俺の背中を叩く

「そもそもお前がそんなに可愛すぎるからあかんねん」

『なっ…』

他の男らよりは出遅れてしもたかもしらんけど

今から一生かけて挽回したるから


かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを

(燃え上がるこの想いを、きっと君は知らない)





長いww
なんかもうこんなクオリティですみません(´・ω・`)

幼なじみネタ、大好きです←
エクスタピアスの中では絶対白石がいいです!
立海なら……柳ですかね!

読んで下さってありがとうございました!

美月


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