赤色ハニー | ナノ

red or black?



朝に頭髪検査があったからか今日はクラスの人が特に私の頭をちらちらと見てくる
ときおり私の噂まで耳に入ってくる
いつもはお弁当は教室で一人で食べるけど今日は教室に居づらくて外で食べることにした

中庭に行ってみればベンチが空いていたからそこに座ってお弁当を広げる

「髪…黒に戻そうかな」

「何で?」

「何でってそりゃ注意されるし…それに友…って仁王先輩!?」

「こんなところで一人で弁当とは寂しいのう緋奈ちゃん?」

仁王先輩は私の隣の空いたスペースに座る

「こんな赤髪が似合っとるのに黒に戻すんか?」

「似合ってないです」

仁王先輩は私の髪をさらさらと手に取る
なんだかくすぐったい

「それに次は反省文だって柳生先輩に言われましたし。お兄ちゃんに何と言われようと黒に戻します」

うん
もう決めた
だいたい地毛って言い訳通じなかったし

「ほんまにそれだけ?」

「え…?」

私は言葉に詰まった
注意されるから、というのはもちろんそうだ
けど一番はこの髪のせいで友達ができないって私が思ってるから
もちろん私の人に話しかけられない性格だって原因だと思う
けどやっぱり一番はこの髪のせいだって私は思わずにはいられなかった

「緋奈?」

「それ…だけですよ」

思わず嘘をついた
だってこんなのただの愚痴だ
それに何より情けない自分を誰かに見せたくない

「仁王先輩ご飯食べないんですか?」

これ以上この話をしたくなくて話題を変えた
仁王先輩はお弁当を持っていない

「んー、緋奈のんもらうけぇ」

「…何ですかそれ」

「購買行きよったら緋奈が一人なん見えたけぇ来たんじゃよ」

「じゃあ今から買いに行ってください」

「嫌じゃ。今から行っても焼きそばパンないんじゃもん」

じゃあ何で私のところに来たっていうつっこみは言わない
一応先輩だし
仕方ない少しだけ分けよう

「どうぞ」

「お、ほんまにくれるん?優しいのう」

「少しですよ」

おかずをお弁当のふたに分けて仁王先輩に渡す
そうやって二人で食べていたときだった
近くを通ったクラスの男子二人の話す声が聞こえてきた

「うちのクラスの丸井ってさ−なんか怖いよな」

「確かに。入学式から赤髪とか普通じゃないよな−」

「いっつも一人だし」

「そりゃ話しかけられづらいだろ。俺もなんか怖いもん」

「…」

お弁当を食べていた手が止まった
どうしよう
ちょっと泣きそうかもしれない
うつむいていたら仁王先輩に頭を優しく撫でられた

「やっぱ黒に戻さんで」

「え…」

今の話聞いてたんだろうか
あんな風に言われるのも全部この髪のせい

「あんな見た目しか見ん奴らと関わる必要ないぜよ」

「…でも」

「そん代わり、緋奈が一人のときは俺が見つけてやるぜよ」

仁王先輩の顔を見れば優しい目
その目にははっきりと私が映っている
真っ赤なよく目立つ髪をした、私が

「言うたじゃろ?緋奈の髪は目立つけぇ見つけやすいって。じゃから緋奈が一人のときもすぐ見つけて、一緒におったる」

「…っ」

それは何の解決にもならない
私は友達が欲しい
このままじゃできることはないと思う
校則的にも黒に戻すべきだ

…けど
仁王先輩が似合うって言ってくれたから
そして何より
仁王先輩が見つけてくれるなら赤髪でもいいかなって思ってしまった



 


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