赤色ハニー | ナノ

安心できない安心感



彩先輩とタオルを部員の人達に配っていたら
ジャージに着替えた仁王先輩がコートに入ってきた

「仁王、やっときたね」

黒い笑顔の幸村部長
仁王先輩は慣れてるのかその笑顔を気にもとめない

「すまんの、幸村」

「遅れてくるとは、たるんどる!!」

「そう言いなさんな。保健室行ったときはほんまに体調悪かったんじゃよ」

「行ったときって…またかい?体調不良の理由もどうせ寝不足だろう?」

「…プリッ」

肯定か否定かわからないような返事
そんな返事よく幸村部長にできるなって思う
私だったら…怖くて無理だな、うん

「はぁ…もういいよ。次丸井とジャッカルと試合だから」

「行きましょう、仁王くん」

仁王先輩は今から試合か
タオルは終わってからでいいかな
いいよね
話しかけづらいし
後で彩先輩に渡してもらおう、うん
…って思ったのに何でだろう
仁王先輩がさっきから私の方を見てる気がする
自意識過剰?
いやいやそんなことない
だって目合ったもん

「緋奈」

「はい!?」

わぉ、裏返ったよ

「タオル」

「へ、今ですか?後で渡しますよ?」

「試合中でも使うけぇ、先もらっとくナリ」

仁王先輩が…試合中にタオルを使う…?
見たことないよ
むしろ試合終わっても汗一つかかずに涼しい顔してるのに

「なんじゃ、くれんのか」

「いや…どうぞ」

「ありがとさん」

タオルを受け取った手と逆の手で私の頭をポンポンと撫でて
先にコートへ向かった柳生を追っていった
…っていうか、仁王先輩普通だな
私が気にしすぎた?
そうだよね
彩先輩も遭遇したことあるって言ってたし
私が遭遇したくらい、仁王先輩にとっちゃなんでもないことなんだよ
よかった
同じ部活なのに話せないとかまずいもんね
安心した
…安心した、のに少しショックを受ける自分がいるのは何でだろう


 


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