赤色ハニー | ナノ

音が聞こえる


side 仁王

子ライオンのところに来てみればやっぱりたくさんの人がおった

「あの…やっぱりいいですよ」

緋奈が俺の顔を伺うように見てくる

「何で?見たいんじゃろ?」

「そうですけど…」

俺が人混みが嫌じゃって言うたことを気にしとるようじゃった

「あ、じゃあ私一人で行ってきますよ!!」

ナイスアイデアとでもいうような顔をして
一人であの人混みに突っ込んでいこうと
繋いでいた手を離そうとする
俺は緩められた力の分緋奈の手を強く握る

「だーめ」

「けど…」

「またはぐれたら困るじゃろ?俺のことは気にしなさんな」

「すいません」

「じゃから気にしなさんなって」

しっかりと手を握ったまま人混みの方へ向かう
あれだけ人が多いとこいつなら流されそうじゃのう

「緋奈、手離さんようにな」

「はぐれたら困る…ですか?」

「…、当たり前じゃろ?」

何故答えに迷ったのか
手を繋いでるんははぐれんため…他に理由なんてない
大体俺は暑いのが嫌いじゃからか手を繋ぐんは好きやない
相手の体温が伝わってきて何か嫌じゃ
じゃけどさっきから伝わってくる俺より高い緋奈の体温は何だか心地よい

「あ、見えましたよ!!」

「ん?あぁ…」

緋奈がはしゃいで子ライオンを指す

「可愛いですね!!」

「そうじゃのう」

正直あまり興味はない
けどまぁこれだけ喜んでくれるならよかった

後がつっかえてるので子ライオンのところから離れる
人の多いところは疲れるのう
部活とはまた違った疲労感がやってくる

「すっごく可愛いかったです!!ありがとうございました!!」

緋奈は満面の笑顔を俺に向けた

ドクン…

何か音が聞こえた気がした

「?」

「仁王先輩?どうしたんですか?」

「いや…そろそろ行くか」

「はい!!」

緋奈はまださっきと同じ笑顔
その笑顔を見るたびにさっきと同じ音が聞こえてくる気がした



 


- ナノ -