赤色ハニー | ナノ

いちごミルクじゃありません



この遠足でまた一つ自分を知ったと思う
私は方向音痴だったらしい
だってほら、さっきから一向に爬虫類館にたどり着かないもん

「…どうしようか」

携帯もない
道もわからない
人に聞けばいいんだろうけど
さすが私
人に話しかける勇気がない

「…どうしようか」

本当自分のヘタレ具合に嫌気がさしていらいらする
けどそれ以上に不安だった
だって動物園とはいえ一人だし
場所わかんないし
あーあ、中学生活最初のイベントは散々な思い出に…

「緋奈!!」

「え?」

声の方を見れば人混みの中でもよく目立つ銀髪
仁王先輩だった
こっちに向かって走ってくる

「探したぜよ」

「す、すいません」

仁王先輩の額にはうっすらと汗が浮かんでる

「いきなりおらんくなったらびっくりするじゃろ。携帯も通じんし」

「充電切れちゃってて…あの、他の人達は…?」

「丸井は俺と一緒に探しとる。2年は爬虫類館におるぜよ」

携帯を片手にいじりながら教えてくれた
多分お兄ちゃんに連絡してるんだろう

「本当すいません」

「ええよ、見つかったけぇ。携帯にも出んかったから変な奴に連れてかれたんかと思うたナリ」

仁王先輩は冗談っぽく笑った
さっきまでの不安がなくなっていく

「丸井爬虫類館におるそうじゃから俺らも向かうか」

「あ、はい。お兄ちゃんに怒られそう…」

「いや、泣きつかれるかもしれんぜよ。そりゃもう心配しとったからのぅ」

「それはそれで…」

「ほれ」

仁王先輩か左手を私の前に差し出してきた
なるほど
やっぱりお詫びというかお礼は必要だよね
私が鞄の中からもってきた飴を取り出す

「どうぞ」

私の愛するいちごミルクだ
全部食べられたりなんかしたら困るからお兄ちゃんにもあげたことのないお気に入り

「くくっ」

え、仁王先輩笑ってる?
そんなにこの飴好きだった?

「あ、あの…」

「面白い奴じゃのう。この手はお礼やのうて…」

仁王先輩の手が私の手に伸ばされ、握られり

「手貸しんしゃい、ってことぜよ」

「え、あ…」

骨ばった感触が伝わってくる
仁王先輩の手は冷たい
私の上がった体温が伝わるのが恥ずかしかった



 


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