きみと手をつなぐ5題 | ナノ

ひとりにしてと微笑うきみの、震える手を離すものかと。


(那美先輩やん)

帰り道、公園のブランコで一人で乗ってる那美先輩を見つけた

「何しとんですか」

「財前?やー、童心に帰りたくなったのかな?」

「質問に疑問系で返さんといてくださいよ」

「ごめんごめん」

力なく笑う那美先輩
目は今にも泣きそうやった
こらえてるみたいやけど

「また彼氏さんの浮気ですか」

「…よくわかったねー」

那美先輩の彼氏は有名な浮気性

「ええ加減別れたらどないです?」

「うん、わかってるんだけどね」

それでもお前が一番って言われたら別れようって言えないんだよ、とやっぱり那美先輩は笑う

「先輩…アホっすわ」

「うん…」

「泣いたらええのに」

「人前で泣くとかウザいでしょ」

「俺がおらんくなったら泣くつもりですか」

「どうかな。けど一人にしてほし…」

俺は涙をこらえて震える那美先輩の手を握りしめた

「何かっこつけとんですか。一人でなんか泣かせませんよ」

「財前…」

「んで泣いた後には俺の告白聞いてください」

震えるこの手を離すつもりはない
もちろん、震えていない手やって離したるつもりもないけど


ひとりにしてと微笑うきみの、震える手を離すものかと。






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