I just wanted an excuse to talk to you.




最初は小さないざこざだったはずなのに・・・未来の世界でも血の気が多い奴ってのはいるもので、気が付けば大乱闘にまで発展してしまっていた。


そして、ここまで大きな騒ぎになるとパトロールが来るのは あっという間で、段々とサイレンの音が近付いてきていた。

「ずらかるぞ!」

そう言って騒ぎを起こした張本人のジックスが僕の手を取る。

「でも!」

兄弟達を置いては行けない!っと僕が言う前に強く手を引かれその場を離れてしまった。





兄弟達なら逃げれるだろうっと分かっていても置いてきてしまった後ろめたさと、久しぶりに会い、二人っきりというこの状況・・・僅かに離れたくないっという感情が勝っているせいで離すことの出来ないジックスの手に引かれるままに辿り着いた場所は先程の場所からそこまで離れていない、今にも取り壊されそうなボロボロのビルだった。


ビルの奥へと手を引かれ、入った部屋は前に何かの会社でもあったのだろうけどしばらくの間、使われていなかったらしく埃だらけだった。



「あ・・・」
緊張の糸が切れたのか足が痛むことにやっと気が付き、小さく声が漏れた。
さっきの乱闘に巻き込まれた時に怪我をしてしまったらしい・・・痛む場所に目をやれば乾き始めてるとはいえ、血が流れていた。


僕は小さくため息を吐いて辺りを見回し、家具も何もないこの部屋の隅に座り傷の具合を確かめてみた。
まだ血は滲み出ているけれど縫うほどでは無い傷の深さにホッとした。

みんな心配しているだろうなぁ・・・せめて無事なことを伝えるために連絡だけでも取ろうと腕の通信機のスイッチを押したけれど、うんともすんとも言わない・・・

これで攻撃を受け止めて交わしたことを思いだして、またため息が漏れた。

工具が無いとさすがの僕でも直せない・・・ジックスに頼んで兄弟に連絡を・・・っと考えていると周囲を確認していたジックスが戻ってきて、入り口を静かに閉めてこちらにやって来た。

「このまま少し休もう ・・・傷を見せてみろ」

そう言って跪いたジックスに片足を持ち上げられバランスを崩した僕は両手を後ろについた。

どうして怪我をしていることを知っていたんだろう・・・

そんなことをぼんやりと考えていると傷の具合を調べていたジックスが突然、傷口を舐めた。

「ジックス?!」

予想外の事で上擦った声で名前を呼ぶとジックスは小さく「巻き込んで悪かった」っと呟いた。

そのまま乾いた血も、乾き始めた血も舐め取ってしまったジックスはどこに持っていたのか小さな薄い緑色のビンを取り出して中の液体を傷口に数滴垂らした。
傷薬と思われる液体は酷く冷たくて、僕の足を伝っていった。


こんな未来の世界なのに薬?っと怪訝な顔をする僕に気が付かなかったのか、ジックスはマントの裾を口に持っていき、歯を立ててから裂くと僕の足に巻いて止血をしてくれた。


いつもの人をバカにしたような態度とは違うその行動に思わず「狡い・・・」っと声が漏れた。

「ん?」
僕の漏らした言葉にようやく顔を上げたジックスと目が合った・・・

「な、なんでもない・・・!」

一気に顔が熱くなるのを感じて慌てて目を反らすとジックスはクスクスっと笑っていた。

「変な奴だな。まぁいい、ここならしばらくは見つからないだろう。今の内に少しでも体を休めておけ」

そういうとジックスは僕の横に腰を下ろして壁に背中を預けるとフードをグイっと引っ張って顔を隠して寝る体制を取ってしまった。

今まで何度か肌を重ねてはいたけれど、隣で寝る姿なんて見たことが無くて、無防備な姿を晒してくれることが嬉しくて連絡を取りたかったことなんて忘れてしまっていた。






どれくらい時間が経ったかわからない・・・

浅い呼吸と規則正しく上下するジックスの胸・・・

薄暗い部屋とフードのせいで覗き込んでも顔は見えなかったけど、どうやらジックスは本当に眠ってしまったらしい。


『起きないでね』っと祈りつつ僕はそーっと、ジックスの肩に頭を預けた。

みんな心配してるだろうなぁ・・・っと兄弟達の顔が頭を過ったけれど、もう少しだけこうしていたかった・・・



僕もこのまま少し休もうと目を閉じるとクスクスと笑うジックスの声が聞こえてきた。

起こしてしまったのか、起きていたのかはわからないけど僕は慌てて体を起こしてジックスの方を見た。

「可愛い奴め」

そう呟いたジックスと目が合ったかと思うとすぐに指で顎を掬い上げられて触れるだけのキスをされてしまった・・・

慌てて身を引いて離れると僕の反応を見てジックスはまたクスクス笑い始めた。

「逃げなくてもいいだろう? それにこれ以上は何もしない。今はな。」

そう言ってジックスは僕の腰に腕を回して引き寄せて抱き締めた。

「そうは思えないけど・・・」

胸の中で呟く僕の声にジックスは抱き締める腕の力を緩めると今度はおでこにチュッと音を立ててキスをして
「お前の傷が癒えたらそのうちな」

っとニヤリと笑いながら僕を腕の中から解放して見詰めてきた。

僕はジックスの顔がまともに見れなくてキスされたおでこに指を当てて掌で顔を覆った。


そんな僕の反応が面白かったのかジックスはまたクスクス笑って

「ほら、少し寝ておけ。」

っとそれだけ言うだけ言うとまたフードを目深に被ってまた眠りにつき始めた。

「う、うん・・・」

なんだか掌で転がされてる気もしながら僕も壁に寄りかかって寝ようとするとジックスの頭が僕の肩に倒れてきた。

こんな状態じゃ朝まで寝れそうにないなぁ・・・









あとがき

診断メーカーの王さまゲームで王さまになられた蒼木さまからのリクエスト
甘いジックスD。

甘い、大丈夫、きっと甘い・・・っと自分に言い聞かせつつ。

リクエストありがとうございました!少しでも楽しんで頂ければ幸いです(*´∇`*)

あ、ちなみに早朝、
通信機が壊れてないジックスがガイズを呼び出して無事にドニーは家族のところに帰れましたwww









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